ジョージ北峰の日記
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大混乱を来たしたエイ部隊だったが、モンスターイカはパトラが率いるシャチ部隊に攻撃を受けると戦場から慌てて退却して行った。 その夜エイ部隊は再び態勢を立て直し進行、夜間の内に無事Dランドに上陸することが出来た。
それにしても、一時は「もうだめか!」と思うほど我が方の機が揺れたが、ベンも戦士も不思議なくらい冷静だった。 そうする内に、突如機の揺れも止まり、モンスターイカの吸盤が窓から離れて行くのが、そして・・司令室の窓から一頭のシャチがモンスターイカを追尾して行くのが見えた。 一瞬の出来事だったが、シャチを繰る機敏で勇敢な戦士の姿が目に焼きついた。
シャチの胴には、幅の広いバンドが巻きつけられ、そのバンドに鉤のような金具や鎖が装着されていた。戦士は自身の体をバンドの鉤に繋ぎとめ、鎖を繰ってシャチを操縦しているようだった。 それにしても、速くて機敏なシャチの動きに戦士が対応できなければ、たちどころに投げ出されてしまうだろう。モニターで彼らの戦いぶりを見たことがあったが、実際目の前で見ると、その迫力は違っていた。 パトラは複雑なシャチの動きに合わせて一体となり泳ぐことが出来るだけでなく、鎖を使って上下左右、自在にシャチを繰ることが出来た。 話を戻そう、私達の頭の上を通り過ぎて行った戦士はパトラだった。何時ものことながら、味方が危機に瀕したときには、必ず彼女の姿が其処に現れた。
彼女は水中戦士用のヘルメットをかぶり、袖なし、短パンのウエットスーツ、腰には短剣、片手に槍、そして足ヒレを着用していた。しなやかに身をこなしながらシャチを繰り、逃げるモンスターイカを追っかけている。サーチライトの光を受けて、彼女の槍や剣が暗闇の中で時折”キラリ”と光る。海中で戦う彼女の姿は想像以上に大柄に見えた。彼女の素早い動きに腕や脚が生々しく白く弾け、シャチと絡みながら戦う姿は神々しく見えたが、一方ではとても官能的だった。 彼女の姿を見ただけで、彼女のためなら「たとえ死ぬことがあったとしても」後悔することは「ない!」と断言できるほど興奮していた。いや、興奮させられたのかもしれなかった。
一度は「駄目か」と思うほどだった。だからこそ彼女の姿は、海に住む女神のように見えた。 パトラには、人の心を揺さぶり、魅了し、鷲づかみにしていくカリスマ性があった。 今回の事でも、私は魔法にでもかけられたかのように、一層彼女の魅力の虜になっていた。 ベンや他の戦士達が落ち着いていたのも、パトラを信じていたのかもしれなかった。 ところで、パトラが使っていたヘルメットについて説明しておこう。ギリシャ戦士のそれに似ていたが、防御用ではなく驚いたことに、なんと海水中の酸素を取り出す、魚の鰓(えら)のような機能を有していたのである。だから彼女は水中で自在に戦うことが出来た。 私は、このヘルメットが地球温暖化の悪化に伴い陸地が水没するような時が到来した場合「人類が生き残るための強力な武器になるのでは?」と、本当に嬉しくなった。 一方この国の科学技術の水準の高さに改めて驚き怖くなった程である。 つい先程まで、辺りを席捲していたモンスターイカは、瞬く間にシャチ部隊の反撃にあって霧散して行った。 私達の部隊が態勢を立て直そうとしていた時、司令塔にパトラがシャチを繰りながらゆっくりと近づいて来た。機内の戦士達は一斉に立ち上がり、歓声を上げて彼女を迎えた。彼女は私のほうを見て、何か合図をくれたように思えた。 私は感激のあまり涙が出るのを如何してもこらえることが出来なかった。
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