■ゲロッチャ !!■
DiaryINDEXpastwill


2006年09月03日(日) 石田衣良「LAST」

石田衣良の「LAST」を読んだ。



追い詰められた人間の 終わりの時を書いた短編集。
借金苦のオハナシが多かった。
金の切れ目が縁の切れ目というけれど、運の切れ目も金次第なのかなぁー



石田衣良は、私と同じ3月28日生まれというので親近感を持って読んでみたけれど
これといって思うところは何も無かった。
感銘を受けたりはしなかった。
なにか自分と同じ匂いがするかもな、そこから自分が探れるかもな
そう思ったけど
無かった。残念。



ただ、海外で幼女を買春する外科医を撮る男の話と、
借金のカタに ロシアンルーレットをさせられる男の話には
心が動いた。



ロシアンルーレット。
石田衣良もロシアンルーレットが好きなんじゃないだろうか。もしかして。
私は、映画やドラマの中のロシアンルーレットのシーンが好きだ。
緊迫感がたまらない。
今の日本ではまず起こらないロシアンルーレット。
この話では、ヤクザの争いのなかで出てくるが
ロシアンルーレットのシーンが書きたくて、
この設定を捻り出したんじゃないだろうか。もしかして。



っていうか
今、気がついたんだけど、
そうか緊迫感か・・・・・
この「LAST」という短編集のほとんどは、追い詰められた人間の緊迫感を描いている。
わー 好きなんじゃん!私、好きなんじゃん! こーゆーの!
映画やドラマや舞台では、生きるか死ぬかの瀬戸際のシーンを見るのが好きだ。
戦争映画に心が揺さぶられるのも、
人の心が透けて見えるような最期のシーンに引き付けられるからだ。
人が死ぬときっていうのは、その人の人生が見えるもんだと思う。




うーん。
シチュエーションは好みなのに、
あまり面白く感じなかった原因はなんなのだろう?
・・・・登場人物に感情移入できなかったからかな?



文体の問題かな?
なんていうかな… サラサラしてた・・・。
読んでても手触りとか匂いとか、空気を感じることができなかった。
温度や湿度も感じられない。
このシチュエーションなら、もっと、
じっとりした空気感を感じさせるような描写があってもよかったんじゃないかな。
特に、匂いはまるで無かった。
平和な家庭には、温もりのある煮炊きの匂いがあるだろうし
愛しい子供の寝顔を見たら、子供の匂いをクンカクンカ嗅ぎたくなるだろう(私だけ?)
ホームレスの人には体臭があるだろうし、
ブルーシートの中だって、きっと匂うに違いない。
そういう描写が無い。匂わない。
乾いていて、キレイ。



緊迫したシチュエーションには、
人間の5感を表現する描写があったほうが好みだなぁ私は。
でも最近の映画やドラマでも、
脂ぎってたり薄汚れてたり臭そうだったり暑苦しかったり
そーゆー描写はないよね。
みんな除菌されてそうな顔だったり、空間だったりするよね。
この短編集も「ダーク&ビター」で謳ってるんだから、
もっとネチっこく暗くて苦くて臭くても良かったかも。




ああ、でも 
私が「借金」嫌いだから、この話が駄目だったのかも。
読む以前の問題なのかな。


みつる |MAIL