TWILIGHT DIARY
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2002年07月15日(月) |
窓の外のオルフェウス。。 |
今日は大事な用で、ある病院の手術棟の待合室に3時間ほど居た。 新しい、空調も整った箱のようなその一室の居心地は、決して悪くはなかった。
こうして、人が誰かの為に病院で待つというのは、 長い一生の間、そう少ない事ではないと思う。 それぞれどんな立場で、どんな思いで待つことだろう。
待合室の窓から、病院の中庭の広い駐車場が見える。 昨夜来の雨で、車のまわりには、たくさんの水溜りがある。 他の棟の人々の様子も、窓の向こう側に見える。
私は、病院の窓に様々な思い出があり、眺めて気持ちが軽くなった時もあるが、 あまりに空気が自分には重すぎて、窓しか見る事が出来なかった事もある。
その窓から、何とかしてどうにか逃げ出せないものか、と一瞬思ったこともある。
窓の外には違う現実があり、窓の内側のこの現実が夢であるなら、 どんなことがあっても、その窓から逃げ出したいと思った。 重い空気に耐えられなくて、眼を現実からはずして、 窓の外に視線がいったのである。
誰がどう頑張ろうと、人間の力では、 もうどうにもならないという事は、往々にしてある。
オルフェウスがあの鏡の向こう側で、神との約束を破ってつい振り返ったのは、 彼を呼ぶ声が、現実そのものだったからかも知れない。 結局、彼は現実から逃げることは叶わなかったのである。
だが誰もが、そんなオルフェウスの純粋さ、 一度は悲劇的な現実から逃げ出したい、 失った愛する者を生き返らせたいと願う心情には、同感せずにはいられない。
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