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2002年11月26日(火) 日本の男の人の魅力。。

今日は中村嘉人氏の文学講座の日で、題材は池波正太郎の梅安の第一巻「殺しの四人」であった。

梅安シリーズは、氏によると、
池波さんの作品の中でも一番、女性に人気があるらしい。
食の描写や、あの三寸針(釘ではない)による鮮やかな殺しのテクニック、
色気の部分など、その小説の魅力はたくさんあると思うが、
講座を受けている内に、ふと男の人の魅力って何だろうと思った。

非常に私好みの話で申し訳ないが、
雷蔵の現代物の映画で、「ある殺し屋」というのがある。
雷蔵の演じる、温和で実直なタイプの小料理屋の主人は、
実は陰の殺し屋で、畳針で誰にも気付かれずに見事な殺しをする。

私には、どうもこれが梅安と重なり、
いくら池波さんが、梅安を大男のように書いていても、
本を読んでいく内に、雷蔵が演じる梅安になってしまう。

雷蔵は、眠狂四郎だけを見ると、あまりわからないが、
人の光と影、表と裏を演じ分ける事がとても多かった。

幸せな殿様だったのが、陰謀でどん底まで落ち、
妻や片腕までなくしてしまう浪人になったり、
武家の養子だったのが、あることでつまづき、
愛する人と別れ、無宿人になったり。
だが、どんなにみじめで落ちてしまっても、
地べたに這いずり回ってでも、命がけで最後には敵を討つ。

梅安の、浅蜊と千六本の小鍋仕立などを作って、茶碗の冷酒をすする姿と、
殺しをやっている時の姿は、相反しており、文字通り、人の表と裏である。
それは、偽善者の裏表などと云うのとは全く違う、
非常にバランスのとれた、人の表と裏である。

女性ファンが多いという原因はその辺じゃないだろうか。

表面は柔らかく見えるが、決めるところでは決める。
口ばかり強がって詰めの甘い人よりも、普段は物静かで、
棋士のようにここで詰むと思ったら、そこは逃さず決断し、一気に勝ちにでる。
だが、本当に勝敗がつくまでは平静を保ち、謙虚に平常心で勝負する。
勝ったからと言って、別段自慢しない。
負けた相手のことも思いやる。
柳のような柔軟なバランス感。

それが、日本の男の人の魅力なんじゃないだろうか。
















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izumi [HOMEPAGE]

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