TWILIGHT DIARY
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さて、今年の春に花を咲かせて、 夏にはたわわに実った梅で漬けた梅酒が、もうかなり飲み頃である。
一ヶ月前には、まだフレッシュ過ぎて、味がこなれていない感じがしていたが、 今日出して味見をしてみると、もうすでに出来上がった感じがする。 まろみが出てくるのはこれからかも知れないが、バランスの良い味と香りである。
鼻に抜ける梅酒のさわやかな香りを嗅ぐと、 梅花が開き、野鳥たちが集って囀った春の庭や、 芍薬や牡丹が色鮮やかに咲き誇った夏を思い出す。
そんな春夏の庭はもう遠い過去だが、冬の庭も侘び寂びがあって良い。
冬の庭は、散り惜しんだ菊の花が冬枯れて、 秋に置き去りにされたまま、冬の垣根に寄り添う。 白玉の木の葉は落ちて、白玉だけがゆらゆらと静かに風に揺れている。
寒くて厳しい冬の庭の植物には、春夏のあの心地良くいい匂いのする風や、 昼下がりの柔らかな陽射しの記憶は残っているのである。
不思議な事に、人の手を借りたこのような梅酒であっても、 その生物としての季節の記憶は、その実の香りに深く刻みこまれて、 味や香りを愉しむ者に、過ぎ去った季節の庭の賑わいを鮮明に思い起こさせる。
そしてまた、その季節の庭の記憶は、巡り来る新しい春や夏の期待にも姿を変えるのである。
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