浪漫のカケラもありゃしねえっ!
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2001年12月12日(水) 『切腹』を見たのだ!

年末、TV放映映画の顔ぶれが侮りがたい。今夜の関西地方での深夜放映の映画は、小林正樹監督作品『切腹』。
出演は仲代達也に三国連太郎だ。邪悪も愚かしさも演じられる好きな役者さん達。
夜中に起き出し放映前の解説を読み、さあ録画して再び寝よう....としたのに思いっきり寝そびれた。
あまりに重厚な骨太い作品ぶりで、目が離せなくなってしまったのだ。物語の残す印象ときたら、その痛烈な皮肉さ、無惨さ、歯ごたえありすぎ〜。
井伊家の庭先を借りて切腹をしたいと申し出る浪人の登場から始まる。その口実で押し掛ける浪人達に金品を与えて立ち退かせる他家の噂に、先頃も強硬な態度をとったばかりの井伊家家臣達。井伊家の家老と浪人は、それぞれの無惨な物語を語り始める。
ヒゲを伸ばした顔の中に目だけが光る浪人役は仲代達也、対峙する家老役が三国連太郎。座したままの長丁場の語りそのものは淡々と、それゆえに回想シーンの惨さや苦悩と怒りの激しさが際だつ。浪人の微妙な声音と表情。それが破局の予感と緊迫感を盛り上げ、ラストに圧倒的な奔流となって襲いかかる。なんという脚本だ。こいつを真っ向から受けて立つとは、すごすぎるぜ、仲代達也!

小林正樹監督作品って、あんまり見たことがなかったんだ。ううむ、ヘヴィですごかった。解説見ると、世代的には黒沢明や市川崑と同じ時代の人ってことだ。
モノクロームの世界の画面構成の妙味も、素晴らしいものだった。古い作品だから解像度も今と差があって、ありありと映し出すというわけにはいかない。模糊とした陰影の塊にしないための照明や撮影の計算。
白砂におちる屋根の影、据えられた刀・槍先の角度や丘の稜線までも、すべてが語りたい対象に視線を収束させている。光と影が生む肌と布の質感。ちくしょう、『陰陽師』の画面構成したスットコドッコイ達にこの見事な画面の妙技を見てほしいもんだなあ。(^^;)
モノクロ育ちの監督達、昔は唇を青く塗ったり(これはかなり初期?)泥水に墨汁入れて(『七人の侍』)コントラストを出した作品もあったらしい。
そいえば、市川崑監督は、最近もわざと色調を落とした画面の作品を作っている。色調を落とされた人体は、そのフォルムと質感をあらわにする。古い時代の写真のようだが、独特の雰囲気。


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