浪漫のカケラもありゃしねえっ!
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2002年05月12日(日) オーストリアGP/フェラーリのナンバー2

TVのスイッチを入れてチャンネルを合わせた途端に、「EZTV」で佐藤琢磨の事故映像。ぐわああぁぁっ!
思い出されるのは今までに見たクラッシュや事故の数々。しかし、地上波放映のときには覚悟が出来ていたので、どういう状態の衝撃で怪我の可能性があるとしたらどこかを考察する余裕がありました。
本人が手を動かして合図していたこと、これで頭や首への衝撃度は意識を失うようなものではなかったとひと安心。モノコックあたりは大きく変形していないようなのにマシンから出られないことで、以前のハインツ=ハラルド(脳震盪&膝の骨にヒビ)やラルフ(サスが足にささる)のような怪我かとも心配したのですが。まあ、大きな怪我はないとわかってホッとしました。
スカパーで生放送を見てはった人達は、容態が判明するまでたまらなかったろうなあ。

チームオーダーは、かなりの確立で出るだろうと予想していました。
たとえ20ポイント以上の差があろうと、シーズン中の開発競争の推移やアクシデントで元の木阿弥になってしまうのがフォーミュラワンの世界。タイトルを取りこぼす可能性を少しでも小さくする手を打つのが、フェラーリの方針なのだから。
98年、99年、超速のマクラーレンを相手にフェラーリがどんな追い上げを見せたか。そして2000年もまたアクシデントでノーポイントとなったり6戦の間勝てなかったことは記憶に新しい。
そして今回も、もし仮にウィリアムズ陣営のピット戦略がもう少しフレキシブルであったなら、どうなっていたか。
....以前雨のGPでやってしまったごとく、ルビーニョが最終ラップにそれをしてしまうのではないかと恐れていました。そして、やはりそうなってしまった。あからさまにやってしまったな、ひどい騒ぎになる、きっとあちこち荒れるぞ、と頭を抱えました。
それはたぶん「自分には勝利を得る実力がある」というルビーニョのプライドの発露だったのでしょう。それはまた、チームオーダーで勝つことの屈辱、それを最も激しく突きつける行為にも思えました。たぶん、ふたりとも心はズタズタになってるに違いないと。
何が起こるか承知の上で契約しプロフェッショナルとしてその仕事に集中するドライバーの姿を好きになったんだ。ドライバーをこういうむごい状況に追い込みかねない哲学を持ったチームだと知っていて好きになったんだ。そんな自分にとっても、誇らしく祝福されるべきフェラーリ1−2にブーイングが浴びせられるのは、耐えがたい光景でした。
異様な雰囲気に包まれたパルクフェルメ、ルーベンスにトロフィを渡してポディウムの中央に立たせるミハエル、彼らの記者会見での表情。その表情を見て、抱きしめて守ってやりたいとどんなに願ったことか!
ライバルと競うことを愛するミハエルに、この1戦でのライバルはルーベンスだけだった。最後の最後に、競うことを禁じられた。喜びはないだろう。
ああ、ルーベンス、君はやはりタフではないのかもしれない。傷ついたプライドを癒すすべを、その行動が表情が求めてしまっている。その波紋は、チームメイトに、報道する者達に、見守る観衆に、さらに広がる。
ルーベンスは2年契約を終えたばかり。ベテランのわりに若い彼も、2年たてば33才。低年齢のドライバーが次々デビューして活躍する昨今、それ以降の行き先はどうなるか。来季以降ミハエルに挑戦し、フェラーリでタイトルを狙うしかない。これから彼らのどちらかがタイトルの挑戦者となるかの戦いが始まるのだ。
エースは、人の汗と涙を踏み越えて立つ。それゆえに、他を圧倒して君臨しなければならない。ミハエルはライバルと競うことを愛するから、ルーベンスが強くあればあるほどミハエルはベストを尽くすだろう。ミハエルに長く戦ってほしいゆえに私は強いライバルの出現を喜ぶが、その一方でたぶん今回のようにむごい光景を見ることは増えるかもしれない。そのジレンマが心を蝕んで、たまらなくなる。
エディなら、とっとと譲ってしれっと笑って済んでたかもしれないな、とも思う。
現時点での通算成績、エディ4勝、ミカ・サロ0勝、ルーベンス1勝、彼らがどのように戦ったのか、20年後に覚えている人はおそらくそれほど多くないだろう。通算獲得ポイントからは、彼らの戦いぶりは見えない。それを承知で彼らはフェラーリと契約したのだ。すべてフェラーリの哲学ゆえなんだ。かつて誰もそれにブーイングなど浴びせはしなかったものを!
何を今さら手のひらを返したように攻撃するのか、その恨みと怒り、愛しいドライバーが感じたであろう屈辱感、ファンになってからの4年の思い出が心の中を荒れ狂う。
叫びだしたい。でも、言葉にならない。泣きたい。でも、涙は乾いている。心も乾いている。夜中、「ぐおおおお」だの「うぐぐがああ」だの、吼えてしまう。けっきょく一睡もできずに朝を迎えることになってしまった。


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