浪漫のカケラもありゃしねえっ!
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『ペイン』
エンジンの響きを全身に感じ、コーナーからコーナーへ。 セッティングでどうにもならなかった、頑固なアンダーステア。 小さく舌打ちしながら、ステアリングを修正する。 ここでコンマ数秒無駄にすることになる。 P1の文字は、はるかに遠い。 だが、チャンスはまだあるはずだ。 俺自身の限界は、もっと先に在るはずだ。
アクセルを踏み込む。 うなりをあげ、加速していくマシン。 出し抜けにグリップを失い、マシンのテールがすべりだす。 コントロールを失い、止めようのないスピン。 なすすべもなく、それが終わる時を待つ。 スローモーションのように、周囲を流れる時間が引き延ばされる。 いくつも見てきた悪夢が、脳裏をかすめる。 グラベルで跳ね上がるマシンの感触。 タイヤに巻き上げられた砂利が、鋭い音を立ててバイザーにぶつかる。 近づくタイヤバリア。 衝撃に備えて、歯を食いしばる。 全身を打ちつける衝突のショック。 砂煙の中で、それは終わる。
痛いだろう?と君は聞く。 俺は、答える。 ああ、ちょっとばかり。 打ちつけた膝。首と背中と、それからプライドが。
君は、聞くかもしれない。 危険を承知で、それでも走るのか? 勝てないマシンじゃあ、つまらないだろう?
なぜ走る? よしてくれよ。そんな疑問がわいたら、辞め時ってもんだぜ。
君は知っているか? 時速300キロの世界を。 チェッカーフラッグを受け、リザルトを得る。 仲間達が喜ぶ顔を目にして、長く苦しい仕事が報われる瞬間の感慨を。
飢えてるんだ。この世界の誰もが。 勝つことに、一歩でも近づきたいと。 つかみ取れると信じているんだ。
ああ、痛むさ。気が狂いそうなくらい。 傷のことじゃないぜ。俺のハートがな。 勝利に飢えて、荒れ狂ってる。 叫んでる声が聞こえないか? 誰にも負けやしない。俺にはその力があるんだ、と。
おい、疑ってるのかい? ヘイ! ちゃんと見てろよ。 次のレースをな!
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小説にしようと思ってた断片をちょっとかえて、架空OPにしてみました。 はい、こんな口調だから、もちろんイメージしてたのはあの人です。(笑) いつもと感じがちがうかなあ。あまり浪漫突っ走ってないけど、架空のナレーションだからこんなのもアリ、ということで。(^^;) しかし、ネタを使いまわしたら、やっぱり新たに書き直さないとあかんか。 あうう、自分で自分を追いつめてしまったようなっ。(自爆)
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