浪漫のカケラもありゃしねえっ!
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終末時計、現在は7分前。 私らはこの時計とともに生きてきた。終末や破滅の予感におののきながら育ってきた。 1年ほど前、「2分針が進んだ」と聞いたときは、心臓が凍った。一方で、「この前まで9分前に戻っていたんだ」と希望をかみしめた。この先、針は何分進むのだろう。 終末時計を思うと、条件反射のようにひとつの曲が浮かぶ。スティングの「ロシアンズ」だ。ロシア人達も彼らの子供を愛しているに違いない....。歌声が響く。そう、その頃は、破滅が訪れるなら火元は東西の冷戦だ、と誰もが思っていた。 何度も、暗い夜に目にしたプロモーションビデオ。白黒の映像の中、銃を捧げ軍靴が行進する。苦悩にゆがむ老いた顔。「午前零時」に近づく秒針。繰り返し現れる時計が、針を刻む様。 あのメロディを思い出して、そして、私は泣くのだ。誰もがわかっているのにどうにもならない歯がゆさ、ひとりの力の無力さ。どこで事態がかけ違ってしまったのかという怒り。最終兵器を作って脅しあうこんな世界を作ってしまったヒトという種への憤り。こんな恐怖の中の均衡で平和を維持してる世界に、子供達にそれでもなんとか生きのびていけという、先人達への憤り。 ああ、でもわしら、とっくにその、手をこまねいて世界を破滅させるかもしれない世代、世界の動きを背負ってる世代に、なっちまってたんだよな。 わしらは、核兵器や放射線がどのようにヒトのカラダを破壊するかを知っている。化学兵器がヒトとその子供達になにをしたかを知っている。生物兵器の恐怖を知っている。戦争や兵器が、カラダだけでなく心や魂を病ませていくことも知っている。対立する民族や宗教・思想への憎しみが、どんな野蛮さと悲劇を生んできたかも知っている。 終末時計の針を進めるのも戻すのも、わしらの世代の役目なんだよな。時には思うのさ。それが恐ろしくて、泣くのかもしれないと。
ああ、まだ頭の中にエンドレスで響いてやがる。<ロシアンズ しかたない。今日はその響きとともに眠るさ。
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