not ready

2003年06月08日(日) 23秒の沈黙

地下室とは考えたものだ。
いったい誰が作ったのだろうか?避難所とは言うけど、
何か起きてからでは遅いのに・・・。
そんな所逃げ込む暇なんてないよ!

地下室の利点・・・どんな大きな音を出しても迷惑を掛けない。
気付かれない。例えば、誰かを殺しても、自殺したりしても。

オーディオのスイッチを入れた。音楽を流す。
なんでも良いが、ここは壮大なスケールを感じさせる交響曲が似合う。
クライマックスは静かに逝きたいと思うから。

右手にはピストルを、左手には人生の全てを握って。
天秤に掛けたら右手の方が重い。人生の全てと言ってもそのくらいの程度だ。
簡単に引き金だって引けてしまう。
全てがこの一瞬で終わりにできるのはとても楽だ。
背負ってきたモノを一気に解き放つことができるから。

「もういいや」ボリュームを上げる。体のボリュームも上がる。
全身が震えている。これは恐怖なのか?喜びなのか?
体が言葉にならない感情を表現している。
心臓はピッチを上げて、全身に血液を送り出す。
右手を震わせながら銃口を頭に突きつけた。

「さ、逝こうか!」人生の重みはどこかに埋まるだろう。震えは止まる。
その時、全ては静寂に包まれた・・・23秒の沈黙の後、
聞こえてきたのは幼い頃、母親が私にいつも隣で聞かせてくれた子守唄だった。

再び時は動き出した。私だけを置いて。


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