地下室とは考えたものだ。 いったい誰が作ったのだろうか?避難所とは言うけど、 何か起きてからでは遅いのに・・・。 そんな所逃げ込む暇なんてないよ!
地下室の利点・・・どんな大きな音を出しても迷惑を掛けない。 気付かれない。例えば、誰かを殺しても、自殺したりしても。
オーディオのスイッチを入れた。音楽を流す。 なんでも良いが、ここは壮大なスケールを感じさせる交響曲が似合う。 クライマックスは静かに逝きたいと思うから。
右手にはピストルを、左手には人生の全てを握って。 天秤に掛けたら右手の方が重い。人生の全てと言ってもそのくらいの程度だ。 簡単に引き金だって引けてしまう。 全てがこの一瞬で終わりにできるのはとても楽だ。 背負ってきたモノを一気に解き放つことができるから。
「もういいや」ボリュームを上げる。体のボリュームも上がる。 全身が震えている。これは恐怖なのか?喜びなのか? 体が言葉にならない感情を表現している。 心臓はピッチを上げて、全身に血液を送り出す。 右手を震わせながら銃口を頭に突きつけた。
「さ、逝こうか!」人生の重みはどこかに埋まるだろう。震えは止まる。 その時、全ては静寂に包まれた・・・23秒の沈黙の後、 聞こえてきたのは幼い頃、母親が私にいつも隣で聞かせてくれた子守唄だった。
再び時は動き出した。私だけを置いて。
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