++ Wasabia ♧ japonica ++

平凡で退屈な日常の中にこそ、目を向けたい一瞬がある。
大事なことは、いつもその中にしかないのだから。

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◆ 2002年10月29日(火)
Sくんの苦悩はいつ解放されるか
27才のSくんは、背も高くて笑顔の素敵な良い男なのだが
すでに3歳年下の女房と4才と2才の子供が居て、
若いながらも立派に一家を構えている。

いつも、たくましい男っぷりを披露してくれているのだが、
意外や意外、これが女房には頭があがらないのだ。



彼が入社して数ヶ月のこと、まだ彼が22才の頃だった。
夜中の1時にうちのダンさんの携帯電話がなった。

すでに我が家では就寝時間を過ぎてとっくに夢の中、
寝ぼけた声で電話に出ると、そのカミサンからの電話だった。

「うちの旦那が帰ってこないんです!」

あらま、どうしちゃったのかしらん。

「Sくん、もう定時に退社したよ。
どっかで飲んでるんじゃないかな?」

そう言っても彼女の心配は収まらない。

「まぁいい年の男なんだから、そのうち帰ってくるよ。」

なんとかなだめて電話を切った。
翌日彼に聞くとやっぱり友達と飲んでて遅くなったらしい。

「おまえさぁ、あんまりカミサンに心配かけるなよ。
遅くなるんなら電話くらいしてあげなよ。」

というと彼、どうやら「遅くなる」という電話はしたらしい。

「なんで女って男の付き合いわかってくんないんすかねぇ。
飲みに行くって言うとあいつ機嫌悪いんすよねぇ。」

「そりゃしょっちゅう飲みにいくとあかんわなぁ。」

「そんな月に一回くらいしか行かないんすよ。」

「え?そうなん?(^^;)」

「だから女ってやつは」

「新婚だからなんじゃないの?」

「いつまで新婚なんすかねぇ。」


3年経っても新婚きどりの夫婦はいっぱいいるし。
そんなの、わかんないよ。

ってかうちは飲みに行くって言われたら遅くなるのは
いつものことだから、ほって寝ちまうんでいちいち待ってねぇし。


結局、彼は飲みに行くのを禁止されたらしい。
ちなみに携帯も取り上げられ、解約。

そこまでせんでも....とか思うのだが。
敵もさるもの、事件はそれだけでなかった。

禁止されたら男は、隠れてやるもの。
そしてそれは、なぜか女にはバレルもの。


ある給料日のこと。
給料日には、みんなで一ヶ月の労をねぎらい、
一杯飲むのがうちの会社のやり方で、彼も1杯付き合って
帰って行った。その30分後のことである。

「残業時間が足りない!」とカミサンから会社に電話。

給料を計算してくれているのは、私を手伝ってくれている
アルバイトのMちゃん。
はたから聞いていて心配したのだろう、私の机の側にきて
じっと私の電話の対応を聞いている。


心配しなくても、
計算してくれた後に私が再度計算し直してOKだしてるから
もし間違っていても私の責任なのよ。

再再度計算しなおして見たが、やっぱり間違っていない。
3度やりなおして電話をかけ直した。

「あのね、何回やってもやっぱり合ってるんだけど
何時間足りないと思うの?」

「3時間ほど足りないんですけど...。」

そこで、何日に何時間なのか電話口で言ってもらうことにした。

「○日が○時間、○日が○時間...」

ふんふんと聞きながら、正直、なんでそこまで細かい
時間を知っているのだろうと怖くなった。

「○日が○時間」

「え?その日は残業してないよ。」

「え?でもこっちでは残業していることになっているんですけど」

「なってないけどねぇ。」

「つけ漏れだと思います」

「うーーーん、あのね、この日は誰も残業してないんだけど。」

「え?」

「Sくん、○○さんと行動が一緒だからこの人といつも
同じ残業時間になるんだけど、
この人も残業してないんだよね。勘違いだと思うよ。」

「そんな!だってこの日は○時に帰ってきてるから絶対
残業しているはずなんです!」

えぇ!何時に帰っているか、毎日つけてるのかぁ?
すげーーーっ!!

「....うちは自己申告制で、自分で自分の残業時間
書いてもらっているから後からじゃ確認できないし....。
それに○○さんと同じ車で帰ってるから○○さんと
残業時間が違うことはあり得ないんだけどねぇ。」

「そんな.....。」


その後ソファーで飲んでた○○さんにも確認。

「えー、前のこと覚えてないけど、
残業時間は忘れずにつけてるぞ俺は。」

「そうですか。」

その日は残業してないことを納得してもらい
カミサンには電話を切ってもらった。


Mちゃんが心配そうに

「大丈夫なんですか?」

「会社的に? それともSくんの家庭的に?(^^;)」

「うーーん、両方かしら。」

「大丈夫、大丈夫、.....後は向こうの家庭の問題だよ。」

「Sさん、何してたんでしょうかね(^^;)」

「さぁ....(^^;)」

そこで彼と親しくしている先輩Hくんが横から

「その日、オレと飲んでたんだけど...。」

「まぁ、そうなん?(^^;)」

「オレが誘ったんだよね、悪いことしたかな。」

「今度からあんたからカミサン電話してあげなよ。
誘わなくなったらSくんがかわいそうだよ。」

「うーーん。オレなんか、悩むなぁ」

「気にしない、気にしない。なんとかなるでしょ。」



周りではやり取りを聞いていた職人たちが、すっかりSくんを
酒のつまみにして盛り上がる。

やれ、だらしないだの、やれ、尻に敷かれているだの。

「まぁ女には女の言い分があるわけだし。」

なんて言いながらも。
「たまに遊ばせてあげても」と思ったのは言わなかったけども。




あれから4年。
カミサンからの「残業時間が違う!」の電話は2回。

カミサンもわかってきたのか
「○時間違うんですけど、また遊んでたんでしょうかねぇ。」

「あはは、じゃ、確認してみようか?(笑)」

なんて感じで受け答えしている。


がんばれ、Sくん。
子供が大きくなったら、
もうちょっと自由が利くようになるよ、きっと!


きっと...。わかんないけど(^^;
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