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■ 昼下がり
いつもの道を歩いていたら 今まで気がつかなかった建物をみつけた ビルの谷間にひっそりと カビ臭そうに佇むそれ
門をくぐると石畳がつづいて 道祖神のような像が簡素に並んでいる
民芸品と工芸品の展示場 入り口の受付に一人の女性が座っていて
仕事をしているのかずっと俯いて 薄いガラス一つ隔てて こちらに気付く様子もないので
僕はコツコツと二つ 窓を指でたたいた
少し驚いて顔を上げると にっこりと頬笑み館内へ促してくれる その静かな所作に好感を覚えながら 会釈を返し引き戸を引いて 中へと足を踏み入れた
館内は静かで誰もいない 自分の足音だけがカツコツと木霊して
漆塗りの器々 竹細工や金物が 放り出されたように それでも丁寧に並べられていた
丹念に眺めながら こんなものに囲まれていれば つつましくも清楚に暮らせるのかなと夢想を抱きつつ
入り組んだ造りの内装 二階、三階、屋上へ雑然と並んだ作品
街の喧騒から離れ 遠野物語の屋敷に迷い込んだかのような錯覚の中で 迷路を抜けていく
忘れ去られたような品々の ひとつひとつに感動をおぼえながら
誰も来ないガラスケースのなかで それは美しかった
雅やかでもなく 艶やかでもなく 実直なそれ
また街への門をくぐって 表の張り紙に目をやると
此処は今日までだと知った
2004年11月20日(土)
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