度々旅
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イラク人質事件。とてもショックだった。ここ数日、それ関係の記事を読む度に、ああなんてバカなんだと思っていたけれど、やっぱり助かって欲しかった。知らないうちに、やけに親近感も湧いていた。生きて帰って来て、散々世間に叩かれ、怒られて、でも生きて帰ってこれてよかったななんて言われて欲しかった。生きてなければそれもできやしない。 旅に出ると、結構彼みたいな人はいる。危険だと言われているのに、出かけて行ってしまって、周りに心配されている人。帰って来た本人はケロっとしてる。でもその陰にはミッシングペーパーがばらまかれている人もたくさんいる。旅する時には、自分のことが印刷されたミッシングペーパーを想像する力も必要だと思う。 以前アメリカでゲストハウスを探している時に、声を掛けてきた男性がいた。私は無視したのだけれど、友人は彼が親切な人であると判断、ついて行こうと言った。夜で人通りが少なく、初めての場所だったので、私は躊躇し、彼の親切を拒絶したのだけれど、友人にはそんなあたしの態度が信じられなかったらしい。結局彼は良い人で、ゲストハウスまで連れて行ってくれた。そして私は、友人に怒られ、明日謝りに行こうと言われた。 今でもその時の私の判断は間違っていなかったと思うし、向こうから近寄って来た時には特に警戒すべきだと思う。人を信じれないことは悲しいけれど、身を守るためには仕方がない。それが、銃も何も持ってない旅行者の唯一の身を守る手段なのだから。 今回の彼が、どのように拘束されたのかはまだ明らかではない。ただ、バクダットの昼間の光景をテレビで見ていたら、騒々しい普通のアジア都市に私には見えた。でも、日常がそこにあるからといって、危険がないわけではない。危険な場所だからといって、そこで普通の生活が営まれていないというわけではないのだ。危険とは目に見える何かの形として存在しているわけではない。それを見た時には終わりの時かもしれない。だから、私達旅をする人間は、警告に従わなければならない。危険を確かめることは、できないのだから。
彼はなんて良い名前をつけられていたのだろう。彼の死が政治的にこれから利用されることがないよう願う。
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