何度「諦めた」と言ったんだろう。 彼のことを。
でも。 私は待っていた。 入り口ばかりを見て。 彼の影を探していた。 6時に近づくにつれて高鳴る胸も。 もう自分じゃ紛らわせられないくらい。 自転車の音がするたび腕を止めて。 足音に神経を集中させて。
だって私は彼を嫌いじゃない。 優しい声音も。 その存在も。
紛らわせるなんてこと。
こんな私に出来ない。
だけどやっぱり。 認められやしない。
それはそうと。 その彼の高校の文化祭がもうすぐあるらしく。 明日は予行練習だって。 彼のクラスは劇をする。 その劇はシンデレラ。 彼の役。 シンデレラの姉。 メイクして。 女物の服きて。 足も肩も腕も出して。
わあステキ。
「王子様役よりは似合うんじゃない?」
「オイ。まあ確かにそうやけど。」
可愛い恋愛をするつもりはないけど。 耐えられないくらいの大きな愛なら欲しい。
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