愛玩人形の抱き方+
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リンクのページを今更ながら作ろうかと思ったのですが、思いつかなかったので、一日一サイトの創作雑記リンク(造語)をしようと思います。
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その日はとても寒かった。夕方に、彼女に会いたくなって携帯で呼び出す。久し振り、も、元気だった、も言わない彼女らしさ。私には似合わないコートを着た長身が、店の前に立っている。 「ごめん、待たせちゃった」 「別に良いよ。行こう」 私は彼女に言った事はないけれど、こうして二人で並んで歩くのが好きだった。背が高いこととか、一見ぶっきぼうな態度とか、そう言うの全部が好きだった。 こっそり歩調を合わせながら、冷たい空気の中を歩く。冬の街は私の大好きなものの一つ、彼女に似合うと思っているものの一つ。 彼女は私が会いたいと言えば会ってくれる。泣きたいと言えば泣かせてくれる。 私は彼女の、抱えてる寂寥のようなものや、恐怖や、自身に対する攻撃的な思考や、破壊性や、それら全てを知りたいと思っていた。聞きたいと思っている。一方的な思い込みでしかないかもしれないけれど、私とそれらと似ているような気がするからだ。そんな彼女が爪を立ててる子猫に見えるからだ。なんて言うと怒られる気もするけれど。 「…どうかした?」 と。横顔を凝視していた事に気付かれ、そう問われてしまう。 怪訝そうに覗き込んで来る、その表情をじっと見ながら思う。 ただ、何もしなくたっていい、私はあなたがそこにいるだけでいい、そう伝えたい。…けれど。私は私のこの思いが、勘違いであるという恐れと、思い上がりだと言う恥かしさで、今まで言い出したことはない。 「ううん。――格好いい顔だなあって、見てただけ」 「何言ってんのあんた?」 「ほんとよ」 いつか言えればいいと、いつも思ってる。
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献呈 i am a i. sitemaster/ 銀太さん
*このテキストは市野の勝手な創作でフィクションです。リンク先にインスパイアされただけの文章で、直接は何ら関係がありません。
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