愛玩人形の抱き方+
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悪夢、ではなかった
#本日の雑記にはやや猟奇的な表現があります。苦手な方は読まずにお戻りください。
ACT.1 私とあなたは笑いながらじゃれあっている。くすくすと楽しそうに笑いながら触れ合い、笑いあう。ふわふわとした感情だけがあって、背景は白い。そこがどこだかは分からない。
ACT.2 私があなたに軽く飛びついて、二人そろって床に倒れこむ。私はあなたの上にいて、それでも二人ともくすくす笑うのをやめない。穏やかに高揚した気分で、微笑みあう。
ACT.3 あなたは私に、「いいよ」と言う。 私はあなたに、「いいの」と訊く。 「いいから。いいよ」 「そう?」 私が首を傾げると、あなたは笑った。 本当は少しこわかったのだけれど、こわくないって思いながらあなたの目に手を伸ばした。思いきって、えいって力をこめてみたら、存外簡単にそれはえぐれた。その簡単さに私は拍子抜けする。 あなたが笑う。
ACT.4 あなたの眼球は、弾力があって柔らかく、とても触り心地がいい。手に取ってみると、ぬめりのある細いケーブルみたいなものが、目の奥と瞳をつないでいた。手に取って――迷う。 「ほら、いいから」 あなたはそういって私を気遣って、微笑んで勇気付けてくれるけれど。 「…うん」 けれど。私はどうしても、その視神経をひきちぎることはできなかったのだ。
目覚めた時に、あったのは。 嫌悪でも動悸でもなく、ぼんやりとしたわずかな後悔だけ。
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