薔薇園コアラの秘密日記

2003年05月04日(日) ルブリン一泊旅行

 ポーランド南部のルブリンという町に、友人知人たちと一泊二日でいってきた。
 途中、カジェミシュ・ドルニーというヴィスワ河沿いの田舎の村に寄った。村の名前は、14世紀に君臨したカジェミシュ大王の名前を冠しているという。ヴィスワ河の対岸の奥まったところに王家の立派なレジデンスがあるそうだ。

 その村は、ポズナンとルブリンを結ぶ交通の要所になるところで、街道沿いの大樹の幹の大きさが、いかに古くからこの一帯が栄えていたかを気付かせてくれた。

 小さな村ながらも、れっきとした観光名所らしく、たくさんの人でごった返していた。
 目を見張ったのはギャラリーの多さ。芸術家を多く輩出した村でもあるらしい。いくつかの画廊にふらりと入ってみた。
 何軒めかで、作風がとても気に入った風景画があった。川を下流から捉えたアングルの絵画で、しばらくその四角い景色から眼が離れなかった。

 そこは、イェジー・グナトフスキーというプロの画家の画廊だった。初めて耳にした名前だが、パンフレットやレプリカの絵葉書がたくさんおいてあり、それらによると、ヨーロッパをはじめ日本やアメリカでも有名な画家らしい。

 その画を観た後、村を降りて、ヴィスワ河の堤防で休憩した。
 ぼんやり河を眺めて過ごした。渡し舟で多くの観光客が対岸に渡っている。レジデンスに向かう人々なのだろう。
 
 川下よりも川上の風景を見ているほうが楽しい。遠く下流に押し流されていく水面を目で追うよりも、絶えず新しい流れを捉え、さらにはその上流へと思いを馳せる。 
 グナトフスキーの画も、川をさかのぼっていた。今回の小旅行も、これからヴィスワ河をのぼってルブリンに向かう。
 今回の旅のテーマは「遡上」かな。春だしね。

 ルブリンは、きれいな街だとは前々から人づてに聞いていたけど、実際に足を踏み入れてみると、本当にどこかしこから小奇麗な雰囲気が漂う街だった。きっと街並みの美化や景観保護のために街をあげての政策がとられているのであろう。
 こんな街で暮らしてみたいな、と思わせる街であった。

 夕方、大人子供、大中小入り混じって、みんなで街の散策をした。大きく張り出すカフェテラスを横目に、旧市街の広場へ。
 ふらりと教会を覗いてみると、厳かに夕方のミサをしていた。外観はごく普通の教会だけど、内装は、思わず息を飲むほど豪華絢爛で荘厳であった。

 翌朝、ルブリン城を簡単に見学。古いユダヤ人ゲットーがあったところ。第二次世界大戦時には、ルブリンにヒトラーの臨時政府が設置された。この城がポーランド人やユダヤ人の牢獄として使用され、ここの近郊にあるマグダネスクの強制収容所で大量虐殺された。

 お城の博物館に、ポーランドの有名な歴史画家のヤン・マテイコの作品があった。「1569年ポーランド・リトアニア併合の調印式」のもの。
 ヤン・マテイコの作品というのはどれもこれも3m×5mぐらいの大きな作品で、大きな絵の中にたくさんの登場人物が描かれているので、誰が誰で何をしているのかわからないけど、その迫力にただただ圧倒されてしまう。
 唯一、リトアニアのアン女王の顔だけは認識できた。ヴィラノフ宮殿にも国立博物館にもアン女王の肖像画があるので顔に見覚えがあった。

 民族村公園でゆっくりお散歩して、帰路に着いた。

 途中の景観は、どこまでも新緑の田園風景が続き、のどかでなんとも言えず美しかった。
 少し前のポーランドは、四月になったといえども、まだ裸の土と枝木だけのモノトーンの景色だった。この眼に鮮やかな緑一面の景色は、ここ数日間の気温の上昇で、草木の成長に勢いがついたからだと思うけど、まるで寒々しい風景画を春色の油絵の具で一気に塗り替えてしまったかのようでもあった。

 季節のいい間は、ポーランドのこの美しい風景にずっとわが身をゆだねていたいな・・・と思いながら、ワルシャワへ向かった。
 
 ワルシャワに戻るといきなり現実に戻った。
 すすけた高層アパート、がたがたの舗装道路、ど派手な広告看板、剥き出しの路肩、 汚れた空気、etc. 

 ルブリンがいかに小奇麗な街だったかをここで再認識した。

 * * * * * * * * * * * * 
 
 それにしても、カジェミシュで見つけたグナトフスキーの絵画、素敵だったなぁ。どうしても、どーしても欲しかったんだけど、芸術に全く理解も造詣もないパパは絶対にダメという・・・。買ってくれるまで地団駄踏んでねばってみようかと思ったけど、他に同行者がいたし、いくらなんでも恥ずかしいので我慢。
 それに先週、思いつくままいっぱい無駄遣いをしてしまったことが頭をよぎり、涙をのんで諦める。どこかのホロスコープの金運のところで、「使いすぎ。収入を考えて」ともあった。余計なお世話だよ・・・。
 
 でも、ちょっと悔やまれる。一人でも運転していける距離なんだけど、いつか買いに行ってきてもいいかなぁ。もう売れちゃってるかなぁ・・・。

 


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祐子 [MAIL]

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