書き散らし

2001年07月30日(月) 夜の匂い花の香り��




「何で」

とオレは言った。声はしゃがれて掠れている。猿轡がない。


 安心していい。ここは病院だ。


「病院?」

 そうだ。

「アンタが・・・」

 なんだ?


アンタが見つけてくれたのか。それとも助けてくれたのか。

「いや。」

 カカシ先生がおまえを見つけたんだ。

「・・・・・・・」

 明け方な。裏庭の薬草園に来たときにオシロイバナの茂みがぐちゃぐちゃに踏み荒らされてて、その中におまえが倒れていたそうだ。


オシロイバナ・・・オシロイバナだったのか。
「明け方に?倒れて?」

 ・・・・・・あぁ。
 
あいつはおれを放って去ったのか?

 カカシ先生は用があって帰らなくちゃならなかったんで俺が来たんだが…

「あの」

 ん?

「て…たぶんもう平気だから…」

 あぁ、じゃゆっくり開けろよ。

ほんとは手だけじゃない。俺を気遣って肩を抱く手もそのままでなんだか居心地が悪かった。でもあちこちが痛んで支えが無かったら起きていられるか分からなかった。

暖かい手がそっと離れる。
空けていない視界は赤いような白いような色で瞼をこじ開けると視界は緑のような白いような、何にも見えない。

 どうだ?目は痛まないか?


「……」


ばらばらとモザイクが散らされていくように視界が晴れていった。


「…!」

…驚いた。なんだか声がいやに近いとは思っていたがさっきまで横から声を掛けてきていたイルカの顔がほとんど真上から覗き込む形でオレの目をじっと見ている。
抱きかかえられた形で、思わず身を硬くする。

 
 ちゃんと見えてる…みたいだな

声に我に返るとイルカは無表情でいて、オレの瞼をこじ開け観察を続けた。その様子はえらく事務的に思えた。
なんだかむっとした。

 どしたよ、腹でも減った?

イルカが言った。
は?と見返すとにかっと笑った。

「腹?」

 もう2日も経ってんだぜ。

「ふつか」



  センセー!サスケの奴、どお?


ばんっ

と立て付けの悪いドアをこじ開けるように入ってきた。

 ナルト、戸が壊れる。

  せんせ、サスケの奴、なんともねぇんだろ?

 静かにしろよ、お前、声でけぇんだから。

  あっ、眼ぇ開いてんの!

 こら、落ち着けよ。

抱きかかえられたままのオレをナルトが目をまん丸くして見つめる。なんだよ!そのカオはよ?

  サスケ!おい!見えてる?

「…見えるし、聞こえてる。」

  おぉ、お前、抱っこされて、オンナノコみたいだぞ!

「なっ…!!」

  あはっ、赤くなってやんの

「なんだよ、このウスラトンカチがっっ」

 おい、やめろって。

「離してくれ!」

ナルトの馬鹿が笑う。

  なに、赤くなってんだってばよ〜

くそ!うるせえんだよ!なにイルカの後ろに隠れるみたいにこっち見てんだよ!

「もう、起きられる!」

 待て、待て待て。ナルト!お前、ちょっと出てろ。

  えっ、だって大丈夫なんじゃあねえの

 大丈夫は大丈夫だ。おまえ、うるさいから退場!

  えぇ〜

 今日は夕飯食わせてやっから、買物しといてくれ。ほれ、財布!

  ホント!?…おわ、すっくねぇ!

 ほっとけ!メモ入ってるから、鍵も。

  …うん。

二人の遣り取りを聞きつつもオレは何とかイルカの腕から抜け出そうと身体を動かそうとした。でもうまくいかない、くそ!腹減ってるからか?

  サスケ!

ナルトがまたオレを呼んだ。カオを向けると神妙な顔でオレを見ている。

「なんだ」

なんて答えてもイルカの腕の中だ。かっこわりい。

  サクラちゃん、心配してるぜ!

「…ああ」

  オレは!おまえが居ない間任務がなくって特訓してたけど。ちょっと暇ができたから来てやったんだかんな!

は?
なんだと言う間も無くナルトはバタバタと出て行った。
あいつほんとうるせえ。忍者だろ?まったく。



 サスケ。

いまだイルカの腕の中だった。は、とカオを上げると今度は背中に当てるものをくれてオレを座らせ直した。
なんか肩が寒い。どうせまた寝るだけなんだろうしさっきのままでも…




は?

おいおい。なんだ、それは。ちょっと寒気が…

 背中は、どうだ?痛むか?

イルカが言う。

「少し…」


 気が付いたら退院して良いって聞いたけど、もう一回だけ医者に見て貰おうな。今、呼んで来るからな。 


そう言ってイルカが立ち上がる。オレの手をぽんと叩く。
はっとする。
気が付かなかったがオレはずっとイルカの手を握っていたのだ。
くっついて自然になっていたそれを、剥ぐようにオレはイルカの手を解放した。

ドアが閉まる。
握り締めていたせいで少しかいていた手の汗がすうと渇いていく。
オレは服を着替えさせられていて前で合わせる病院の服を着ていた。腕は見えるところには余り傷が無かったが打った肩やらが痛い。
周りを見るとがらんとした病室には水差しと湯呑みと、絞って乾いたタオルがあるだけだった。ベットの周りのカーテンがドア側だけ引かれている。さやさやと音がして窓に引かれたカーテンがふわりと波のように舞う。赤い波。夕方なのか。

おかしな心持だった。
何があったのか。
教えられていない。
話していない。

妙に落ち着いてしまって自分に起こったことがはるか昔のことのように感じた。
これは放心しているって言うことなんだろうか。
ベット脇のチェストにある水差しから口をつけて水を飲んだ。
唇と口の中がじくりとする。


かちゃり、と音がし医者を伴ったイルカが現れた。

 サスケ、ちょっと見てもらおうな。

イルカが言う。
何か引っかかるものがあったがオレはただ頷いた。
合わせを解くように言われ前を開くと医者が片腕だけ着物から抜かせて背中を調べた。腹側も調べる。肩を掴み、伸ばす。座り方を変え足も調べられた。深呼吸させ、痛む場所を聞く。ほかに様子の違う箇所はあるかと聞かれたが分からない。首を振る。
医者は書付をし、大丈夫でしょう、という。


 じゃ、退院できますね。

イルカが礼を言い医者を見送った。
戻ってきてチェストをごそごそやって畳まれたオレの服を出した。

 お前、今日は俺んちへ来ないか、たいしたもんは無いけど飯くらいなら出すからさ。うちに戻って用意するのもしんどいだろ。

「…でも」

あんた、さっきナルトと約束してたじゃないか。

 カカシ先生には俺から連絡しておくさ。

そうじゃない。

 ナルトも来るから、まぁうるさいかもしれないケドな、合宿みたいでたまには良いだろ?

それもあるけど、そうじゃないんだ。


 な?
 
笑顔で云う。
イルカのアカデミーで見慣れた笑顔だった。


「お邪魔でないですか」

せいぜい殊勝な言葉を選んでみた。








 


 

  









[まだ続くんです…]




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