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2002年03月03日(日) 第5章 鑑定評価の基本的事項
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第5章 鑑定評価の基本的事項
不動産の鑑定評価に当たっては、基本的事項として、対象不動産、価格時点及び価格又は賃料の種類を確定しなければならない。
第1節 対象不動産の確定
不動産の鑑定評価を行うに当たっては、まず、鑑定評価の対象となる土地又は建物等を物的に確定することのみならず、鑑定評価の対象となる所有権及び所有権以外の権利を確定する必要がある。
対象不動産の確定は、鑑定評価の対象を明確に他の不動産と区別し、特定することであり、それは不動産鑑定士等が鑑定評価の依頼目的及び条件に照応する対象不動産と当該不動産の現実の利用状況とを照合して確認するという実践行為を経て最終的に確定されるべきものである。
�機‖仂欒猟蠑魴�
対象不動産の確定に当たって必要となる鑑定評価の条件を対象確定条件という。
対象確定条件は、対象不動産(依頼内容に応じて次のような条件により定められた不動産をいう。)の所在、範囲等の物的事項及び所有権、賃借権等の対象不動産の権利の態様に関する事項を確定するために必要な条件である。
1.不動産が土地のみの場合又は土地及び建物等の結合により構成されている場合において、その状態を所与として鑑定評価の対象とすること。
2.不動産が土地及び建物等の結合により構成されている場合において、その土地のみを建物等が存しない独立のもの(更地)として鑑定評価の対象とすること(この場合の鑑定評価を独立鑑定評価という。)。
3.不動産が土地及び建物等の結合により構成されている場合において、その状態を所与として、その不動産の構成部分を鑑定評価の対象とすること(この場合の鑑定評価を部分鑑定評価という。)。
4.不動産の併合又は分割を前提として、併合後又は分割後の不動産を単独のものとして鑑定評価の対象とすること(この場合の鑑定評価を併合鑑定評価又は分割鑑定評価という。)。
�供|楼萢廾�又は個別的要因についての想定上の条件
対象確定条件により確定された対象不動産について、依頼目的に応じ対象不動産に係る価格形成要因のうち地域要因又は個別的要因について想定上の条件を付加する場合があるが、この場合には、依頼により付加する想定上の条件が実現性、合法性、関係当事者及び第三者の利益を害するおそれがないか等の観点から妥当なものでなければならない。
一般に、地域要因について想定上の条件を付加することが妥当と認められる場合は、計画及び諸規制の変更、改廃に権能を持つ公的機関の設定する事項に主として限られる。
第2節 価格時点の確定
価格形成要因は、時の経過により変動するものであるから、不動産の価格はその判定の基準となった日においてのみ妥当するものである。したがって、不動産の鑑定評価を行うに当たっては、不動産の価格の判定の基準日を確定する必要があり、この日を価格時点という。また、賃料の価格時点は、賃料の算定の期間の収益性を反映するものとしてその期間の期首となる。
価格時点は、鑑定評価を行った年月日を基準として現在の場合(現在時点)、過去の場合(過去時点)及び将来の場合(将来時点)に分けられる。
第3節 鑑定評価によって求める価格又は賃料の種類の確定
不動産鑑定士等による不動産の鑑定評価は、不動産の適正な価格を求め、その適正な価格の形成に資するものでなければならない。
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不動産の鑑定評価によって求める価格は、基本的には正常価格であるが、鑑定評価の依頼目的及び条件に応じて限定価格、特定価格又は特殊価格を求める場合があるので、依頼目的及び条件に即して価格の種類を適切に判断し、明確にすべきである。なお、評価目的に応じ、特定価格として求めなければならない場合があることに留意しなければならない。
1.正常価格
正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう。この場合において、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場とは、以下の条件を満たす市場をいう。
(1)市場参加者が自由意思に基づいて市場に参加し、参入、退出が自由であること。
なお、ここでいう市場参加者は、自己の利益を最大化するため次のような要件を満たすとともに、慎重かつ賢明に予測し、行動するものとする。
� ’笋蟲泙�、買い進み等をもたらす特別な動機のないこと。
�◆‖仂殄堝飴叉擇啾仂殄堝飴困�属する市場について取引を成立させるために必要となる通常の知識や情報を得ていること。
�� 取引を成立させるために通常必要と認められる労力、費用を費やしていること。
�ぁ‖仂殄堝飴困虜罵�効使用を前提とした価値判断を行うこと。
�ァ’禺腓�通常の資金調達能力を有していること。
(2)取引形態が、市場参加者が制約されたり、売り急ぎ、買い進み等を誘引したりするような特別なものではないこと。
(3)対象不動産が相当の期間市場に公開されていること。
2.限定価格
限定価格とは、市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいう。
限定価格を求める場合を例示すれば、次のとおりである。
(1)借地権者が底地の併合を目的とする売買に関連する場合
(2)隣接不動産の併合を目的とする売買に関連する場合
(3)経済合理性に反する不動産の分割を前提とする売買に関連する場合
3.特定価格
特定価格とは、市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさない場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう。
特定価格を求める場合を例示すれば、次のとおりである。
(1)資産の流動化に関する法律又は投資信託及び投資法人に関する法律に基づく評価目的の下で、投資家に示すための投資採算価値を表す価格を求める場合
(2)民事再生法に基づく評価目的の下で、早期売却を前提とした価格を求める場合
(3)会社更生法又は民事再生法に基づく評価目的の下で、事業の継続を前提とした価格を求める場合
4.特殊価格
特殊価格とは、文化財等の一般的に市場性を有しない不動産について、その利用現況等を前提とした不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう。
特殊価格を求める場合を例示すれば、文化財の指定を受けた建造物、宗教建築物又は現況による管理を継続する公共公益施設の用に供されている不動産について、その保存等に主眼をおいた鑑定評価を行う場合である。
�供…体�
不動産の鑑定評価によって求める賃料は、一般的には正常賃料又は継続賃料であるが、鑑定評価の依頼目的及び条件に応じて限定賃料を求めることができる場合があるので、依頼目的及び条件に即してこれを適切に判断し、明確にすべきである。
1.正常賃料
正常賃料とは、正常価格と同一の市場概念の下において新たな賃貸借等(賃借権若しくは地上権又は地役権に基づき、不動産を使用し、又は収益することをいう。)の契約において成立するであろう経済価値を表示する適正な賃料(新規賃料)をいう。
2.限定賃料
限定賃料とは、限定価格と同一の市場概念の下において新たな賃貸借等の契約において成立するであろう経済価値を適正に表示する賃料(新規賃料)をいう。
限定賃料を求めることができる場合を例示すれば、次のとおりである。
(1)隣接不動産の併合使用を前提とする賃貸借等に関連する場合
(2)経済合理性に反する不動産の分割使用を前提とする賃貸借等に関連する場合
3.継続賃料
継続賃料とは、不動産の賃貸借等の継続に係る特定の当事者間において成立するであろう経済価値を適正に表示する賃料をいう。

【留意事項】
�掘崛輜逝茖犠蓮ヾ嫩衂床舛隆靄榲�事項」について
1.対象不動産の確定について
(1)鑑定評価の条件設定の意義
鑑定評価に際しては、現実の用途及び権利の態様並びに地域要因及び個別的要因を所与として不動産の価格を求めることのみでは多様な不動産取引の実態に即応することができず、社会的な需要に応ずることができない場合があるので、条件設定の必要性が生じてくる。
条件の設定は、依頼目的に応じて対象不動産の内容を確定し(対象確定条件)、又は付加する地域要因若しくは個別的要因についての想定上の条件を明確にするものである。したがって、条件設定は、鑑定評価の妥当する範囲及び鑑定評価を行った不動産鑑定士等の責任の範囲を示すという意義を持つものである。
(2)鑑定評価の条件設定の手順
鑑定評価の条件は、依頼内容に応じて設定するもので、不動産鑑定士等は不動産鑑定業者の受付という行為を通じてこれを間接的に確認することとなる。しかし、同一不動産であっても設定された対象確定条件の如何又は付加する地域要因若しくは個別的要因についての想定上の条件の如何によっては鑑定評価額に差異が生ずるものであるから、不動産鑑定士等は直接、依頼内容の確認を行うべきである。
� ‖仂欒猟蠑魴錣砲弔い�
対象確定条件については、対象不動産に係る諸事項についての調査、確認を行った上で、依頼目的に照らしてその条件の妥当性を検討しなければならない。特に、対象不動産が土地及び建物の結合により構成される場合又はその使用収益を制約する権利が付着している場合において、例えば抵当権の設定のための鑑定評価、設定された抵当権をもとに証券を発行するための鑑定評価等関係当事者及び第三者の利益に当該鑑定評価が重大な影響を及ぼす可能性のあるときは、独立鑑定評価を行うべきでなく、その状態を所与として鑑定評価を行うべきである。
�◆|楼萢廾�又は個別的要因についての想定上の条件の付加について
想定上の条件を付加する場合において、
ア 実現性とは、依頼者との間で条件付加に係る鑑定評価依頼契約上の合意があり、当該条件を実現するための行為を行う者の事業遂行能力等を勘案した上で当該条件が実現する確実性が認められることをいう。なお、地域要因についての想定上の条件を付加する場合には、その実現に係る権能を持つ公的機関の担当部局から当該条件が実現する確実性について直接確認すべきことに留意すべきである。
イ 合法性とは、公法上及び私法上の諸規制に反しないことをいう。
ウ 関係当事者及び第三者とは、依頼者及び鑑定評価の結果について依頼者と密接な利害関係を有する者のほか、法律に義務づけられた不動産鑑定士による鑑定評価を踏まえ不動産の生み出す収益を原資として発行される証券の購入者、鑑定評価を踏まえ設定された抵当権をもとに発行される証券の購入者等をいう。
想定上の条件が妥当性を欠くと認められる場合には依頼者に説明の上、妥当な条件へ改定することが必要である。
2.価格時点の確定について
過去時点の鑑定評価は、対象不動産の確認等が可能であり、かつ、鑑定評価に必要な要因資料及び事例資料の収集が可能な場合に限り行うことができる。また、時の経過により対象不動産及びその近隣地域等が価格時点から鑑定評価を行う時点までの間に変化している場合もあるので、このような事情変更のある場合の価格時点における対象不動産の確認等については、価格時点に近い時点の確認資料等をできる限り収集し、それを基礎に判断すべきである。
将来時点の鑑定評価は、対象不動産の確定、価格形成要因の把握、分析及び最有効使用の判定についてすべて想定し、又は予測することとなり、また、収集する資料についても鑑定評価を行う時点までのものに限られ、不確実にならざるを得ないので、原則として、このような鑑定評価は行うべきではない。ただし、特に必要がある場合において、鑑定評価上妥当性を欠くことがないと認められるときは将来の価格時点を設定することができるものとする。
3.鑑定評価によって求める価格の確定について
(1)正常価格について
現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件について
� ’禺腓�通常の資金調達能力を有していることについて
通常の資金調達能力とは、買主が対象不動産の取得に当たって、市場における標準的な借入条件(借入比率、金利、借入期間等)の下での借り入れと自己資金とによって資金調達を行うことができる能力をいう。
�◆‖仂殄堝飴困�相当の期間市場に公開されていることについて
相当の期間とは、対象不動産の取得に際し必要となる情報が公開され、需要者層に十分浸透するまでの期間をいう。なお、相当の期間とは、価格時点における不動産市場の需給動向、対象不動産の種類、性格等によって異なることに留意すべきである。
また、公開されていることとは、価格時点において既に市場で公開されていた状況を想定することをいう(価格時点以降売買成立時まで公開されることではないことに留意すべきである。)。
(2)特定価格について
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法令等とは、法律、政令、内閣府令、省令、その他国の行政機関の規則、告示、訓令、通達等のほか、最高裁判所規則、条例、地方公共団体の規則、企業会計の基準、監査基準をいう。
�◆‘団蟆然覆魑瓩瓩訃豺腓領磴砲弔い�
特定価格として求める場合の例として掲げられているものについての特定価格として求める理由及び鑑定評価の基本的な手法等は次のとおりである。
ア 資産の流動化に関する法律又は投資信託及び投資法人に関する法律に基づく鑑定評価目的の下で、投資家に示すための投資採算価値を表す価格を求める場合
この場合は、投資法人、投資信託又は特定目的会社(以下、「投資法人等」という。)に係る特定資産としての不動産の取得時又は保有期間中の価格として投資家に開示されることを目的に、投資家保護の観点から対象不動産の収益力を適切に反映する収益価格に基づいた投資採算価値を求める必要がある。
特定資産の取得時又は保有期間中の価格としての鑑定評価に際しては、資産流動化計画等により投資家に開示される対象不動産の運用方法を所与とする必要があることから、必ずしも対象不動産の最有効使用を前提とするものではないため、特定価格として求めなければならない。なお、投資法人等が特定資産を譲渡するときに依頼される鑑定評価で求める価格は正常価格として求めることに留意する必要がある。
鑑定評価の方法は、基本的に収益還元法のうちDCF法により求めた試算価格を標準とし、直接還元法による検証を行って求めた収益価格に基づき、比準価格及び積算価格による検証を行い鑑定評価額を決定する。
イ 民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、早期売却を前提とした価格を求める場合
この場合は、民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、財産を処分するものとしての価格を求めるものであり、対象不動産の種類、性格、所在地域の実情に応じ、早期の処分可能性を考慮した適正な処分価格として求める必要がある。
鑑定評価に際しては、通常の市場公開期間より短い期間で売却されることを前提とするものであるため特定価格として求めなければならない。
鑑定評価の方法は、この前提を所与とした上で、原則として、比準価格と収益価格を関連づけ、積算価格による検証を行って鑑定評価額を決定する。なお、比較可能な事例資料が少ない場合は、通常の方法で正常価格を求めた上で、早期売却に伴う減価を行って鑑定評価額を求めることもできる。
ウ 会社更生法又は民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、事業の継続を前提とした価格を求める場合
この場合は、会社更生法又は民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、現状の事業が継続されるものとして当該事業の拘束下にあることを前提とする価格を求めるものである。
鑑定評価に際しては、対象不動産の利用現況を所与とするため、必ずしも対象不動産の最有効使用を前提とするものではないことから特定価格として求めなければならない。
鑑定評価の方法は、原則として事業経営に基づく純収益のうち不動産に帰属する純収益に基づく収益価格を標準とし、比準価格を比較考量の上、積算価格による検証を行って鑑定評価額を決定する。


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