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■ 妄想の国のアリス
トイレで用を足してるときに、すぐ脇の外の廊下で足音がきこえた。 トイレの窓は、網戸を残して中途半端に空いている。
こんなときにもし、外から中を覗かれたらいやだな。こわいな。って思う。 いきなり知らない人の顔が窓のはしっこに映ってこっちを覗いてるんだ。怖くない方がへんだ。
けど、 外から中を覗くのだって、こわいよね。 だって、外から中を覗いた時には既に、中の人はこっちを目を見開いて見てるかもしれないんだよ。 既に気付かれていた。中の人がこっちをじっと見ている。 でも、叫びも表情を変えもしない。ただ見ているだけ。何も伺えない。不気味。 ただ見ているだけ。
わからないもの(unknown)ってのは、恐怖(afraid)になる。
中の人は極度の緊張状態にあるだけかもしれない。 外に人の気配を感じる。もしかしたらこっちを覗いてくるかもしれない。足音が聞こえる。足音が止まった。そこにいる。こっちを見てくるかもしれないこわいこわいこわい
そんな妄想を抱きながら、中の人はトイレの窓から視線をはずせなくなる。 たとえ中の人の妄想どおりに外の人が中を覗いても、 緊張状態にあって心臓ばかりはバクバク鳴ってる中の人は微動だにできない。 それだけかもしれない。
けど、そんなの外の人にはわからない。 中の人が何を考えているのか、本当に生きているのか、どうして最初からずっと窓のほうを凝視してたのか、もしかして俺に危害を加えるつもりだったのか(なんて大変な妄想!)、 そんなことわかりゃしない。
不思議だね、 お互いはとても強く見詰め合っていて、網戸一枚隔てて微動だにできない、 まるで鏡を見ているよう。 なのに、お互いの恐怖は交差することはない。 網戸一枚隔てて対峙しているのは、 壮大すぎるお互いの、妄想に囚われた意識。
次に生まれるものがあるとすれば…、 このあたりはつまらないから、やめておこう。 私が面白いと思ったのは、人ひとりの世界が持つ宇宙規模的な妄想のおそろしさ、と、おかしさ そして、それぞれの世界によって、驚くほど世界が違うかもしれないという当たり前なのに滑稽な話だから。
2006年08月23日(水)
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