 |
 |
■■■
■■
■ 祖国を失うわれわれ
こんなこと、誰が予想し得ただろうか。
※これはノンフィクションですよ
CCUでいろいろ問題が起こってナースが中途退職するのが何人か出て、スタッフが足りないからということで、PICUの私たちの3人がCCUに緊急異動させられる事になった。 当初の予定ではCCUの問題が落ち着いたらPICUに戻してもらえるという話だった。
だが話は二転三転し、今は 「CCUを存続させるためにPICUを一時的に閉鎖する方向にし、将来的にCCUを現在の8床から10床に増やして稼動させる。そのためPICUスタッフのほとんどはCCUの増員要員とし、残るスタッフは一般病棟で働いてもらうが、病院内で欠員が生じる部署があればそちらに異動してもらう」 という状況となった。 院内で欠員て、要するに募集かけても人が寄り付かないような部署って事だろうが。 私たちのことを一体何だと思ってるんだろう。 と、この何日間の間で何回思った事だろうか。
これ何ていう惑星間戦争?
え? ここ病院だよね? 戦場とかじゃないよね?
「なぜ私たちの部署からしかCCUに補充しないのか。今現在CCUがまわらなくて緊急的にスタッフを補充するという目的であるなら、ほかの集中治療部署からも、それこそ習熟したスタッフを補充すべきである」 という我々の問いに対し、ナースのトップは 「どこから補充したら(その人が)辞めないのかわからない」
は?
そもそも今ギリギリの状態で働いている、もともといるCCUスタッフが潰れないなんて保証はないし、私たちが潰れない保証もどこにも無いんだが。 様々な問題を内包しているこの大きすぎる問題に対して、正直病院全体を巻き込んでも解決するかわからないのに、右から左にナースを動かして、欠員が出ればどっかの部署をつぶしてでもスタッフを補充するって。 そういう使い捨てな人間の使い方してると、近いうちにCCUも閉鎖せざるをえなくなっちゃうよ。
ああ。まだ、できて2年くらいしか経ってなかったのにね。PICU。 みんな頑張って立ち上げたのにね。 変な上のスタッフも辞めて、今最高なひとたちしか残ってなくて、このスタッフだから、何が起こっても皆頑張ってこれたのに。 いいときっていうのは、続いてはくれないものだね。
後輩「一家離散ですよ」 先輩「ほんとだね、ファミリーPは崩壊だ」
私「師長さんに来年度別の病院に異動する旨を話したら、”こういったことでうちの病院に魅力を感じなくなって、優秀なスタッフが辞めていくのは、せつないね。つらいね、お互い”って言われたよ。 本当につらいのは、皆がせっかく作り上げたこの部署がなくなってしまう事だと思うけどな」 同期「そうだよね! 私なんて立ち上げのときからいるのに…、ほんと切ないよ…」
祖国が失われたわれわれは、ちりぢりになってどこへ行くのだろうか。
あの設備をそのまま遊ばせておくわけがないだろうから、落ち着いたらなんらかの形でまたPICUを稼動させるだろうって師長さんは言ってたけど。 けれど、完全にもとどおりになるわけじゃない病気と一緒で、かつて動いていたようなPICUは決して戻ってこないだろう。
私「何年かしたらさ、”○○病院に一瞬だけPICUっていう部署があったらしいよ”って言われるようになるのかなあ。私たちはその幻の部署で、今働いてるんだね」 同期「ほんとだね!!(笑)ちょっと絶対写真撮っとかんと」 私「そうだね。PICUの遺影を今後部屋に飾ってがんばろう」
そもそもトップの教授だって、まぁいつまでこの病院でやるのかもわからない。 小児の臓器移植が認可された今、様々な問題はあるかもしれないけれど、そのうち心臓の修復術ではなく心臓移植の方向に進んでいくだろう。 この病院では今現在、大人では心臓移植を進めようとトライしている段階だ。 だが修復術にこだわる教授が果たしてその流れに乗ろうとしているこの病院でいつまでやるのかも不明だ。
いろいろなものが変わろうとしている。 空高く上がってしまった風船がどこに終着するのかは誰にもわからなくて、ただその行く先を見上げて私達は右往左往している。 ただひとつ感じるのは、今まで走ってきた道をあともどりすることなんて出来ないだろうという事だ。
後ろの道はどんどん崩れている。 前に進まなければ、ああ、落ちてしまうよ。 みんな、ころばないように、がんばろうね。 もう風船なんて気にする必要、無いんだよ。
2010年07月29日(木)
|
|
 |