日々のあわ
あかり 



 生きているのは、大人だけですか?


映画【誰も知らない】を観た。

実際に起きた事件(巣鴨子供置き去り事件)をモチーフにしている。
主役の柳楽君がカンヌで最優秀男優賞を取った。
そのくらいの情報だけだったけど、とにかく「子供置き去り事件」を思っただけで、
ものすごく怒りがこみ上げてくるし、不快感があるのでは?と、ちょっとわざと見ないようにしていた。気になってはいたのに。

でも監督の是枝氏の言葉をどこかで聞いた。
『この映画の企画を長い時間支えてきたのも"怒り"でした。企画から15年という時間が経ち、主役に柳楽優弥くんという存在を得たことで、その怒りは僕の中で次第に愛情に変化していきました。
僕のその感情は、多くのスタッフ・キャストにも共有され、映画はようやく完成しました。』


そうか・・・。と少し見たくなった。
と、前置きが長いが、結局観て来たわけだ。

悲惨な場面を削除して健気に生きる子供達だけを描いているのならそれはそれで嫌だなと思った。
でも、違った。

もちろん無責任な母親、もちろん父親も、そして無関心でいる近所の大人たちや、
見て見ぬふりをしている人たち。と、怒りの対象は子供達を取り囲むように存在するのだが、映画の中では子供達が生きていく様子を淡々と映像で綴られている。
だから“怒り”は表面にあまり出てこない。
監督の言うように、それは“愛情”に包まれた表現になっていた。

実際に起きた事件のような悲惨なシーンはないけれど、それを象徴しているようなシーンがあって、はっとした。
なんのことはないシーンなのに、空気ががらっと動いたのが目で見ることができた。
すごいと思った。
そしてやはり、長男役の柳楽君はじめ、子供達の素とも思える演技(いや、素なのかな?それを監督が引き出しているだけなのかな?)が素晴らしかった。
本当の兄弟みたいだった。
本当に子供が無気力に時間をすごしているようだった。
本当に外にでて遊ぶのが心から嬉しいようにみえた。
本当に母を求めているようだったし、諦めてもいるようだった。

陳腐な言い方になってしまうけど、 笑顔が素晴らしかった。
だから泣けた。

映画を見た人のコメントで、「家に帰ってから子供をだきしめてあげたくなった。」と書いてあった。それを一緒に観にいった友人に言うと、
彼女は
「私は自分は絶対にあんなことしないってわかっているから、抱きしめてあげたいとは特に思わなかったけど、回りの大人はいったいなにやってんのよ!って気持ちになったから自分はおせっかいなオバサンになる」
って言ったので可笑しかった。可笑しかったけどひどく同意してしまった。

なんだかまだ上手く整理がつかず感想は支離滅裂だが、映画をみて1日経った今も
長男明君の諦めていない笑顔が忘れられない。




2004年08月27日(金)
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