
|
 |
■
|
2005年06月04日(土)
 |
ミステリアス |
 |
今週はお客さんがメッキリ少なく。 母上と「夕飯食べに来たようなもんだな」と言う日々。 っていうか。 ハナから私は「ただ飯喰らい」目的であって店の手伝いは勘定に入れてませんが。 なんて言ったら怒られるべな。
さて、そんな週末に常連さんがやってきた。 近所の某所にお勤めの同僚グループ8名ほど。年齢は20代なんだろうと思われる。 母上のことを慕ってるらしく「おかーさん」と呼ぶ。 何を頼むにも側に私が通ってても「おかーさん」と呼ぶ。 「おかーさん!ビールおかわり!」と厨房の母上に向かって叫ぶ。 だから私は素通りする。おかーさんに何でも運ばせることにする。
このグループは奥さん連れも二組ほどいるっぽい。 その中の一組は子連れで来る。もうすぐ1歳だという赤ん坊。 基本的に夜の酒を飲む席の子連れはどうかと思う。 思うが他人事だから知ったこっちゃない。 が、その子供のお守りを母上が担当することが多々ある。 親はノンビリ飲める訳だ。 「おかーさん!ヘルプ!」などと母上を呼びつけて赤ん坊を渡す。 母上が赤ん坊を「お姉ちゃんいるかなー」と言って厨房に連れてくるので、仕方ないから一緒に遊ぶ。 そこで「おかーさん」とオーダーを頼まれると子守り交代。 我姉妹の子供4匹を高校生の時から抱っこしてきたので、赤ん坊の扱いは慣れているっちゃー慣れている。
しかしながら、店で母上が他人の赤ん坊をあやすのを見るまで母上が子供好きだとは知らなかった。 しかも、あやすのが上手い。 でも、ふと思い返せば母上がまだ母上になる前に遊んでもらった記憶が微かにある。 母上になった時からの印象で刷りかえられてしまったけれど、昔から子供好きではあったのかもしれない。 常連グループも母上の赤ん坊扱いには大絶賛していた。
「おかーさん、扱いが上手いよね」 「やっぱ、年季が違うよね」「赤ん坊育てたキャリアが違うもんね」
口々に褒め称える。 それを厨房で聞いてる私は、ちょびっとニヤける。
先日来たお客さんは、孫のいるおじいちゃんだった。 2-3回来てるんだけど、なにやら母上にモーションをかけている(笑 一緒に旅行に行こうとか本気で計画を立て始めてるっぽい。 それをノラリクラリとかわす母上。飲み屋のママじゃないんだから口説くなよ。 そのお客さんと母上の会話。
客:「孫は可愛いもんだよ。奥さんも娘さんに孫が出来たら可愛いと思うよー」 (娘の私と母上を幾つだと思ってるかは不明。) 母:「そうですねぇ」 客:「絶対そうだよ。楽しみだねぇ」
思わずニヤっと笑った私と母上のおじいちゃんが帰った後の会話。
私:「孫はもう大学生だと言ってやればいいのに」 母:「いいのよ。適当に言っておけば」
こんな感じで、母上は適当な受け答えが案外スラっと出来てしまう人間だということも最近知った。
常連グループとの会話は、「キャリアが違う」で一旦終ってた。 これ以上の追求はすべきじゃない。 だのに、数十分後に唐突に一人が質問した。
客:「おかーさんは何人子供生んだの?」
母:「私?私は子供産んでないのよ」
しばし、微妙な沈黙。 厨房でニヤける私。 何の悪意もなく、当然のこととして聞いたお客さんの気持ち的には 「こりゃマズいこと聞いちゃったかな」 というのが正直なところかもしれない。
この空気をどうするのか、ちとワクワクして待つ事数秒。
客A:「ミステリアス!おかーさんはミステリアスな女性だ!」
お客さんAが叫んだ。それに反応して口々にミステリアス、ミステリアスと、まさに意味不明。 ここで終れば厨房でニヤけてた私も「なるほど。上手い誤魔化し方だな」と感心したものの続きがあった。
客B:「じゃぁなんで、おかーさんは赤ん坊あやすのが上手いの?」
Bよ。お前、空気読め。頭悪っ! それに対して母上の答えは「色々育てるにもあるのよ」みたいな感じだったかと。
そこでまたお客Aが「ミステリアス!」と叫び。 一同「ミステリアス!」の連呼開始。
「いやぁ、いいねぇ。ミステリアスなおかーさん」
という締めくくりで終了。
このグループ。文章の端々から滲み出てると思うけど好きじゃない。 他のお客さんがいても、お構いなしに大声で騒ぐし。 別のテーブルに荷物置いてお客さん来てもどかそうともしない。 当り前のように聞きもせずに店の物を動かすし。 言い出したらキリが無い、そういう無神経さが私をピキピキさせる。
でもね。「ミステリアス」と咄嗟に叫んだキミ。 顔は見てないので誰か分からないけど、キミだけは何となく好きになれそうだよ。
|
|