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トライアンフ


今日の朝10時、電話が鳴った。

「よう〜、今からギター取りに行くけどいいか〜?」

鉄平は、俺の新しい新居にずっと貸しっぱなしだったレスポールJr.
を返しにもらいに来る事になった。

ずっと、借りてたのは俺の方だから俺が返し行くべきなんじゃないかと、
少し大人になった俺は、常識が身に着いてきた俺は思ったが、

あいつも愛車の鉄の塊『トライアンフ』にまたがって、
亀戸から我が家(吉川荘)がある、東小金井まで来たいらしく、俺も
きっとその方が奴のハートに喜びが芽生えて良い事だから、
思う存分俺んちまで冒険させてあげようと優しい気持ちになった。

鉄平は俺の新居に来るのは2回目だし
バイクで来るのは始めてだが、別に道も何も教えなかった。

「お〜待ってるぜ〜」と言った。

2時間30分後、野太いエンジンの音が遠くから響いて来て
すぐ近くで止まった。

鉄平はかなりの満足感があったに違いない。
俺の事を驚かしたかったに違いない。
家を出てから1回も俺んちに電話をかけずに辿り着けたのだから、
相当楽しい冒険をして来たに違いない。

携帯がなった、「俺今どこにいるかわかるか〜」と言わせちゃいけないと
思って「待ってたぜ〜」と言ってあげた。

鉄平と羽田とノリアキと俺の4人の仲は、いっさいの利害関係を排除し、
その日その時の思いつき、ひらめきで行動し、面白い事を企み、
間とか乗りとか空気とか波とかそんなところから生まれる思いやりとか
優しさとかを丸め込んで、認めあって腹から笑える親愛なる友だ。

鉄平はコーヒーを飲んだ。
俺んちのソファーに座った。タバコふかした。手を洗った。ユミちゃんと
喋った。「良く来た。」「さすがに疲れた。」「うまい棒食うか?」
「いらん」「あ、やっぱいる」「ドレッシングいるか」
「いらん。だって俺、家で飯食わね〜もん」「ほら」
「いらんっていってるだろ」「音楽何聞く?」「なんでもいいよ〜」
「良いの聞かせてやる」
「優しい口調で語りか〜ける〜君〜は南の街から〜やってきた〜」
机に頭ぶつけて苦笑。
「このスピーカーちゃんと4つからでてるの?」「うん」
「公園行こうか?」「良いとこあるんだよう」「行こうぜ」

鉄平のトライアンフと俺のレインドッグを走らせ武蔵野公園に行った。

丘に登って寝転んだ。誰かが飛ばした飛行機が木にひっかかって
みんなで取ってた。

何か鉄平が心にしみる良い事をぽつりと言ったが今は思い出せない。

甲州街道の入り口近くまでトライアンフとレインドッグでツーリングした。

8年前ならそのまま高尾山まで行き羽田とノリアキも呼んで朝まで、
たき火をして、陽が昇ったらまた走り出し、
そのまま八王子インターから大阪に行き、たこ焼き食って通天閣登って
夜が来たら暗闇を走り抜けヘッドライトに「
スピード上げてもこの暗闇をやぶる事は出来ないのかい?」って
話し掛けるのに。

と思いながら鉄平とお別れした。

無事に家に着いただろうか?
それにしても倒れたトライアンフを持ち上げるのはかなりの力が必要だった。

まだ羽田が俺んちに1回も来ていない。
なかなか4人集まるってことが最近ないが
ユミちゃんのハンバーグかカレーでも食いに来いよ。

鉄平!今日はあんがとな!!



2002年09月24日(火)

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