Spilt Pieces
2006年09月18日(月) 
「失恋の回数は?」
そう尋ねられて、思わず言葉に詰まった。
「遊び人だね」と言われたが、別に付き合った人数と聞かれたならば、
詰まっていない。
恋を失うと書いて、失恋。
片思いを「恋」と言っていいのなら、
そして何を「失う」というのかをあえて定義しなくてもいいのなら、
私は片手をちょっとはみ出すくらいの失恋をしている。
破れる恋、ではなくて、本当に恋を失ったものと限定するならば。
たった、1回。
遊び人には、まだなれない。


女の子は、初めて付き合った人を忘れられないものだ、と、誰かが言っていた。
別に、女の子に限らないと思う。
そんなのは、あくまでも個人差。
ただ、悔しいのは、私の場合、その誰かが言った「女の子」に当てはまってしまったということ。
忘れたはずの気持ちは、綺麗な箱に入れてしまったせいか、
すんなりと扉を開けようとしている。
もっと、ボロボロに別れた方が、よかったんだろうか。


友達、と思った。
再会して、やり直そうと言われたときも、
断ることに迷いはないはずだった。
だけど、即答できなかった。
それがそもそもの間違いか、それとも正解だったのか。
どうしてだろう。
あの瞬間、確かに私は彼に気持ちを持っていなかったのに、
首を横に振ることができなかった。
あまつさえ、酔いを理由にキスまでしてしまった。
…ずるい。


8ヶ月、付き合って、
8ヶ月、連絡を絶った。
何度も泣いて、何度も眠れなくなって、
やっと、吹っ切れて、やっと、
強がりじゃなく「新しい出会い」を求めるようになったのに。
同じ時間、彼は何を考えていたのだろう。


私の場合、本人不在では何も変わらない。
冷めることも、好きになることも、何もできない。
だけど彼は、不在によって意味を知った、と言っていた。
俄には、信じられなかった。
また手を離されるのが、怖くてたまらなかった。
駅に置き去りにされる瞬間。
言葉よりも体を求められる瞬間。
忘れられないのは、1年前の今日。
2005年9月18日、恋人として彼に会った最後の日。
別れを決意した日。


約束を、たくさんしていた。
私の誕生日、彼は遊びに来てくれると言っていた。
一緒に温泉旅行に行きたいね、と笑い、
もっとたくさん話をして、もっとたくさんお互いを知って、
いつか彼のところへ行けたら幸せ、と思った。
以前は、いつか付き合うなら、背の高い人がいいなあと思っていた。
でも、彼と付き合ったら、そんなのどうでもよくなった。
幸せだった。
悩んでいても、苦しんでいても、愛してさえくれるのならば。
愛してくれていた頃は。
変化に、段々と気づく。
寂しがり屋の私は、態度で示されないものは何も信じられない。
愛してくれない人を愛することは、できなくて。
彼のどこを好きだったのか、分からなくなった。
手を、離したのは、私。
だけど心の手を離したのは、彼だったと思う。


今回。
彼にきちんと断れなかったから。
彼の一時の気の迷いだと思ったから。
嫌われようと思った。
その方が、もう二度と「友達」の枠から出なくて済む。
ワガママ、たくさん言ったのに。
彼が疲れている日にわざわざ電話をしたり、
メールの返信を遅らせたり、
過去のことを責めたり、
話を逸らしたり、冷たく接したり、
たくさん、たくさん。


なのに、それでも彼は言う。
遠くてもお前がいい、と。
別れたことを後悔していた、と。
寂しくても我慢する、
もう同じような思いはさせない、
言いたいことをきちんと言って、お互いをもっとよく知ろう、
そう、言って、
今までよりも…付き合っていた頃よりもずっとマメに連絡をくれて、
来るなと言っても関東へ来る予約を入れ、
ちょっとしたことでもメールして、
私が落ち込んでいるときも話を聞いて、
格好をつけようとしてじゃない、自分の言葉をくれる。


もし、こんな彼が、今のままでいてくれるなら。
きっと私、不安などないのに。
私でいいの?と聞くと、お前がいい、と返してくれた。
昔、ほしくてほしくて、たまらなかった言葉。
情に流されるな、とみんなに忠告された。
だけど、私、距離さえなければ、
もうとっくに流されていると思う。
むしろ、自分の意思で。


彼が、また元に戻ってしまうことが怖い。
怖い夢をみた。
もう一度、手を離される夢。
胸が痛くて痛くて、
一日中苦しくなるような夢。
私はまだ、返事をしていない。
彼は、無期限で待つと言ってくれたけれど。


ねえ、釣った魚に、餌はくれますか。
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