にっき日和
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今朝はなぜか、暗いうちに目が覚めてしまいました。
時計を見たら、まだ4時半。
そこで、酔狂な思いつきがひらめきました。
そうだ、朝のお散歩に行こう!
我が家から10分ほど歩いたところに、蓮田があります。
たまに通る道だけど、ふだんは気にも留めておりませんでした。
それなのに、今朝はなぜだか妙に、蓮の花が見たくなったのです。
朝一番、清澄な空気の中に開く蓮の花は、
さぞかし魅惑的なことでしょう。
思いたったら鉄砲玉のわたし、洗顔もそこそこに出かけました。
そうそう、祖父母のお墓が蓮田のすぐ近くでしたっけ。
自転車のカゴに、お線香とペットボトルのお水を放り投げました。
薄暗い街には、まだ夜のにおいが残っております。
バタバタと羽音を立てながら、
コウモリの群れが、頭すれすれに飛び回っていました。
夜明けが間近ですもの、コウモリとてねぐらに帰らねばなりません。
誰もいない道路に、ギィギィと自転車の音が響きます。
・・・・・蓮の葉っぱって、こんなに大きかったっけ?
いまさらながら、ちょっと感動してしまいました。
巨大な葉がわさわさと茂る合間に、純白の花の蕾が、
すっくと顔を出しております。
あらあら、まだ少し時間が早かったのかしら??
なぜなら、どれもこれも開きかけの蕾だったのです。
まぁ、それも、みずみずしい趣でよしといたしましょう。
しかし、思えば不思議な花であります。
どうしてこんな泥田から、このような清らかな花が咲くのでしょう。
たしか、お釈迦様が生まれた瞬間、この花が受けとめたとか・・・・・
そんな話を聞いたような聞かないような。
祖父母のお墓は、蓮田からすぐ近く、
田んぼを切り開いた墓地にあります。
人気のない墓地を抜け、墓石の集団が途切れたあたりに、
ぽつんとひとつ、祖父母の墓が。
お線香に火をつけ、そっと手を合わせます。
「ご無沙汰してごめんね」
白檀の香りが、ふんわりあたりを漂いました。
ふと、思ったのです・・・・・・・・
もしや、祖母がわたしを呼んでいたのかなと。
お盆なのに墓参りを怠っていた孫を、叱っているのかもしれません。
朝が苦手なわたしが、暗いうちに目が覚めてしまったこととか、
突然、無性に蓮の花が見たくなったこととか・・・・・・
いえね、きっとただの思い込みでしょうけど。
お盆やら終戦記念日やら、なにかとこの月は、
死を意識させられる機会が多いものです。
草も木も虫たちも、真夏の太陽に負けぬよう、
あふれんばかりの生命力に輝いているというのに。
八月は、生と死が背中合わせに存在しているのでしょうか。
そう、もしや・・・・
さきほどの蓮田のどこかにも、
異界へ通じる抜け道が、
ぽっかりと口を開けているのやもしれません。
・・・・な〜んて、蜘蛛の糸じゃあるまいしね。。。。  ̄m ̄ ふふ
ギィギィ音を立てながら、自転車は、もと来た道を帰ります。
新聞配達のオートバイが、わたしの脇を追い越します。
東の空は、すっかり明るくなっておりました。
背後に残した祖父母へ、わたしは心の中で語りかけます。
また来るね。
ぴょん
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