パンドラの箱
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彼はあたしにとって、全知全能であるから。 手を伸ばさなくとも、その手は繋がれているし、 声に出さなくとも、その想いは伝わる。 あたしにとっては、 ごくごく自然で、ごくごく当たり前で、ごくごくありふれた存在で。
手に入らないと、狂おしくなって、じたばたすることもないし、 想いが伝わらないと、ため息をつくこともない。 投げかけたボールが返ってこないのも、そのボールが届いていないからではなく、 投げ返すまでのタイムラグがあるだけだと理解できる。
それはもって生まれた素養に他ならないから、 他者には理解できないし、真似できないことなのだ。
それだからこそ、 一生懸命に手を伸ばし、 声を嗄らして想いをぶつけ、 返らぬボールを待ち続けるのに。
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