2年の2学期あたりはほとんどと言ってよいくらい嶋さんに手紙を書くという気の起こらない時期でした。少ないながらも往復した書簡の中で私は彼女の手紙の中に、徐々に私の考えに染まりつつある彼女の心の色を読み取ったのでした。もしかしたらそれはかなりの自惚れであって、実際は彼女自身が独自に到達しえた考え方だったのかもしれません。しかしながら可能性として私の考察を彼女の前にこれ以上安易にひけらかすのは彼女の心持ちにとって尚のこと不健康だと、他人の心配は出来る状態でした。
当時の自分の心境を思い出そうとすると、安易に蘇ろうとしないその記憶に単純なもどかしさを感じるし、それを生涯振り返りたくない気でいる自分がいる気もします。一昔前の自分ならきっとこういった再生を試みるという発想すら起こらなかったのだろう。
嶋さんの信頼を失っても、いずれ彼女から離れなくてはいけない。
そうはじめて感じたのがこの時期でした。 このままいけば、限りなく大切に思うだろう人だったから。
手紙を出さなくなってからも相変わらず嶋さんは私の中で恋人なのか友人なのか良く分からない存在でした。
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