きりんの脱臼
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ここは、なかはられいこ(川柳作家)と村上きわみ(歌人)の
コラボレーションサイトです。(ゲスト有り)
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くっつけてちゃんと南の島にして なかはられいこ
とこしえ、と、呼ぶ。 せつな と、応える。
ふたりがそう呼び合っているあいだは、誰も手出しができないのだった。かみさまも。
「ねえ、とこしえ」と、せつな。 「なに、せつな」と、とこしえ。
無人島に流れ着いた恋人同士でもあるまいし、と、意地悪なわたしは思う。 厄介なことに、これは、たぶん、嫉妬だ。または憧憬。
「君のうしろに見えかくれしているそのグレーのもやもやは何?」 ある日、とこしえは言った。 「これはあたしの、瞬間から切り離されたまま漂っている“迷い”よ」 せつなは応えた。
「アップルパイの中にもぐりこんだみたいだ」 とこしえはくすくす笑う。 「ずっとこうしていましょうね」 せつなはしずかに目を閉じている。 《えいえんを口にしたものは禁固百年の刑》という法律をつくろう。 抱きあったまま動かない二人の、胸と胸の隙間に爪を差し込んで風を送るのだ。 世界中であらかじめうしなわれた恋人たちがすぶ濡れている。 火を、ともそう。
カルバドスふりかけている 火をつける 部屋中におまえが匂いたつ 村上きわみ
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