きりんの脱臼
DiaryINDEXpastwill
きりん脱臼商会BBS][きりんむすび][短詩型のページ μ][キメラ・キマイラ

ここは、なかはられいこ(川柳作家)と村上きわみ(歌人)の コラボレーションサイトです。(ゲスト有り)
BBSもあります。ご意見・ご感想など気軽にお寄せくださいね。
メールマガジン「きりんむすび」もどうぞよろしく。


2002年10月20日(日) 村上きわみ

くっつけてちゃんと南の島にして  なかはられいこ

とこしえ、と、呼ぶ。
せつな と、応える。

ふたりがそう呼び合っているあいだは、誰も手出しができないのだった。かみさまも。

「ねえ、とこしえ」と、せつな。
「なに、せつな」と、とこしえ。

無人島に流れ着いた恋人同士でもあるまいし、と、意地悪なわたしは思う。
厄介なことに、これは、たぶん、嫉妬だ。または憧憬。

「君のうしろに見えかくれしているそのグレーのもやもやは何?」
ある日、とこしえは言った。
「これはあたしの、瞬間から切り離されたまま漂っている“迷い”よ」
せつなは応えた。

「アップルパイの中にもぐりこんだみたいだ」
とこしえはくすくす笑う。
「ずっとこうしていましょうね」
せつなはしずかに目を閉じている。
   
《えいえんを口にしたものは禁固百年の刑》という法律をつくろう。
抱きあったまま動かない二人の、胸と胸の隙間に爪を差し込んで風を送るのだ。
世界中であらかじめうしなわれた恋人たちがすぶ濡れている。
火を、ともそう。

カルバドスふりかけている 火をつける 部屋中におまえが匂いたつ  村上きわみ


きりん脱臼商会 |MAILBBS

My追加