きりんの脱臼
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ここは、なかはられいこ(川柳作家)と村上きわみ(歌人)の
コラボレーションサイトです。(ゲスト有り)
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ほころびもほろびも遠いものとして葡萄の種子を吐き出している 村上きわみ
「ほころび」と声にだしてみる。 「ほろび?」と聞きかえす。
「ほ・こ・ろ・び」 「ほ・お・ろ・び?」
セーターに空いたちいさな穴のはじっこから、 五ミリほどの毛糸の先っちょがひょろんと出ている。
「これは芽かもしれない」 「目?」
芽かもしれない。 セーターの大地からにょろんと生えたほろびの芽。 ひっぱればひょろひょろと伸びて、 あてどなく伸びて、 ついにはセーターをほろぼすことになる芽。
目かもしれない。 セーターのほころびから肌が見えている。 凶暴なエネルギーを内側に秘めたまま、 いっときのしずけさを獲得している白い肌。 台風の目のようなしんとした肌。
も し も し、
あ な た、
覗 い て ま す ね。
ほころびてゆく精神と ほろびてゆく肉体に 葡萄の種を埋めよう。 いちばんふっくらした いちばん光る種を埋めよう。
波の音しているけれどぼくじゃない なかはられいこ
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