403 Forbidden

2004年05月13日(木) 裏方

今日の目覚めはやや複雑な気持ちだった。
まさか、昨日の悪夢の続きが見られるとは思わなかったので。
夢の中で僕は、奇妙な展開に苦笑いをしていて
起きてからもその感情に引き摺られたような感じだ。

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仕事の合間、一息つこうかとコーヒーを買いに出たときのこと。
リフレッシュコーナーに置いてあった雑誌を何気なく手に取ってみていると、
表紙に笑顔を飾っていたのは地元の劇団の劇団員だった。

とは言っても、別に同じ劇団でも、
それどころか顔見知りというわけでもないのだが、
恐らく共通の知り合いが何人もいるはず、と思うと
親近感が沸くから不思議なものだ。

それほどまでに、嘗て僕がいた演劇の世界は狭い。

特に裏方は本当に重宝されていた。
少ない報酬、時にはノーギャラで、しかも学校や会社を休んで、
自分が登場せずチケットも売れない芝居を支えるのは、
本当に裏方が好きか本当に物好きしかいない。

10年前、僕は後者の方でその世界へ足を踏み入れた。
隠れ家のような劇場のオペレーションルームで、
僕らは何度も舞台を作り上げ、そして壊していった。

その後僕は裏方から引き摺られるように表舞台へと立った。
役者になって最初の公演は、小屋自体が隠れ家のようだった。
正面に大きな鏡のあり、楽屋からハシゴで舞台に降りるという
不思議な構造のその小屋は、隠れ家というより秘密基地に近かった。

そして、その公演は生涯忘れられない体験へと代わり、
その後何度芝居を打っても、最後までそれを超えることは無かった。

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後にそこは、同時期に筧利夫がレッスン場として使っていたと知った。
ブラウン管の先に見た懐かしい小屋の風景の中に、
僕が超えられなかった壁が残っているように思えた。

そして、僕はまた裏方へと戻る。
次のステージは演劇ではないけれども、
きっと忘れられない体験になる。


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