ロバート・ゴダード また、見つけてしまった文庫本 ミステリーがどこまでも、ミステリー。 最後まで、ミステリー。 ゴダードが書く男性の主人公は、なぜか駄目男が多い。 人生をリタイアしていたり、詐欺師だったり・・ この本の主人公、イアン・ジャレットはプロの写真家である。 ちょっと家庭内が、うまくいっていなくて、 過去に、浮気の相手とドライブ中に、女性をひき殺したことがある。 事故つまり過失はなかったのだが。 あまり思い出したくない過去であり、実際、それほど気にしても いない。 仕事で、写真を撮りに来て偶然に被写体の中に入った一人の女性 その出会いから物語は始まる。 一瞬のうちに恋に落ちた二人。 必ず、また会おうと、家庭を捨てる決心をする。 イアンは約束どおりにホテルで待つが、マリアンは、 電話をかけてくる。 「やっぱりあなたには、会えない。そして、決して探したりしないで。」と。 仕事も家庭もすべてをなくしてしまったイアンは、 ただ探すことしか頭に浮かばない。 手がかりを求めて突き進むが・・・ 心理療法士にであい、マリアンが、通っていたことを知り、 しかも、彼女の名前は、本当はマリアンではなくエリスと知る。 その後幾重にも絡まった糸を丹念に解いていく。 エリスは、過去の時代に生きた女性マリアンに、時々、精神浮遊してしまうのだ。心理療法士のもとに、エリスが話した隠された真実が、 テープに残っていた。 そのテープを手がかりに、二人で、探すのだが。 この後に、本当の謎解きが始まる。 マリアン、つまりエリスは、作られた虚像であって、 イアンが探すべき相手は他にいた。 イアンが過去に殺した女性イソベルに本当の意味があったのだ。 彼女の弟、ナイマンガ何年もかけて、周到に用意した、恐るべき 復習劇が始まっていたのだ。 彼の復習は、イアンがすべてをなくすこと。 一番大切だと思っているものをこの世から葬り去ること。 冷静に、緻密に考えられた、恐るべき陰謀の数々。 佳境に入るほど、血も凍る事実が。 最後に、最愛の娘、エイミーは16歳の命を奪われる。 そして、ナイマンはピストルで自殺。 すべてが筋書きの通り。 ほんのときおり、陰のようにひっそりと息遣いが聞こえてくる、 エリスは、彼のすべてを知っていて、最後まで姿を現すことはない。 この後彼は、どう生き、どういう決着をつけるのか。 写真は、生者と死者を区別しない。 時の断片の中に、光の破片の中に、写真は 人々の構図をはめ込む。すべての人をひとしく。 カメラのレンズをのぞいてシャッターを押すかどうかが、重要なのではない。 目を開けていようが、閉じていようが、それさえたいしたことではない。 写真は常にそこにある。そして、その中の人々も常にそこにいる。
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