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「秘事」河野多恵子  「ぶたぶたの休日」矢崎在美
2003年06月23日(月)

■秘事

昭和のまだそれほど裕福ではなかった時代の大学生の三村と女子大生の麻子は恋人同士。同じ会社に就職するはずだったが、ある事件から麻子は就職を辞退し二人は結婚する。
その後三村夫妻は息子二人に恵まれ、海外勤務を経ながら出世コースを歩いている。
作者は女性で、主人公は三村夫妻なのだが、三村清太郎の立場で、ずっと淡々と語られていく。
私の実年齢より10年ちょっと上くらいの人物設定なので、いつの間にか自分に沿わせて読み進んでいる私がいる。その私は、麻子の心の底が覗いてみたくてたまらない。でも、どうしても見えてこない。素直に読んでいけば麻子は幸せな一生だったと思うのだけど、ひねくれた心を持った「私」は、どこかに麻子の素直でない部分を見つけたいといつの間にか、不幸探しをしてしまうが、見付からない。
息子たちから見ても理想の夫婦像であり、麻子にとって最大の宝物は息子たちではなく清太郎なのだと息子の次郎が自分の妻に話すシーンがある。
「母に何でも聞いて欲しい父とそれを聞きたい母がいる」「母は仕方なく聞いているのではなく聞きたいから聞いてるんだよ」「だから、父が、いろいろ話すときは、母は決して寝巻きやガウンに着替えたりはしないんだ。」
二人がまだ学生だったころに、道路の向こう側にいた麻子がこちら側に来ようとして、事故に合い麻子は顔に縫い傷が残っている。
そのことが二人の間にはずっと横たわっているのだ。
だから、清太郎は自分が死ぬ時には麻子を枕元に座らせてどうしても言いたいことがあったのだ。
「あんたとひたすら結婚したくて結婚したんだぞ。侠気や責任感は、そんなものは微塵もなかったんだ」と。

でも、最後まで清太郎はそれを言うことはなかった。
麻子は突然の肝炎で先に亡くなってしまうのだ。ニューヨークからの帰りの飛行機の中で「二人一緒に逝けると良いけどそれはかなわないから、あなたが先に逝ったとしても、私が先に逝ったとしてもそれを恨まないでね」といった麻子。
貸し金庫の中に二人の髪の毛を入れていた麻子。
「どうやって俺の髪の毛を取ったんだ」と聞かれ「あなたが眠ってから、少しずつ切って集めたのよ。いっぺんにたくさん取ったらいけないから、ほんとに少しずつね」と、答える麻子。
多分、死んでいくことにはまるで気がつかないまま死んだのではないかと思える最後にも、「悪いわね、2度もこんなことになってしまって」とわびる。
最後まで読んでも、ひねくれものの「私」には麻子の心の底は見えなかったけれど、麻子は幸せだったと素直な「私」は思う。彼女にとって一番大切なものは清太郎だったし、清太郎以外にはなにも必要なかったから。


■ぶたぶたの休日
小さい短編がたくさん詰まったとっても幸せになれる本。
ピンクの小さなぶたのぬいぐるみが突然、目の前に現れてジュースを飲んだり、30代のステキな男性の声で話しかけたりされたら、びっくりして腰を抜かすけれど、2度目に会えたら、後を追ってしまいそうになる。
悲しかったりいじけてたりしてる時に目の前にぴょこんと現れてくれたらきっと嬉しくて思わず頬ずりしたくなるだろうな。
この短編集に出てくる人たちも、いろんな問題を抱えていても、いつの間にか自分のいるべきところに戻っていく。
あの点目に見つめられているうちに思い出すのだ、自分が今本当はどこにいるべきかを。
疲れてるときに手にとって見ると心安らぐアニメかも。



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