日々の思い

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こまつ座「紙屋町さくらホテル」 井上ひさし
2003年10月17日(金)

原爆を落とされる直前の広島が舞台。
「さくら隊」は移動演劇団。舞台に立つ前の最後の練習の場面。
団員は人数が足りないために補充されたメンバーは特高警察、日系2世のホテルオーナー、宿泊中の文学博士、天皇の密使他。

「すみれの花咲くころ」の歌声のなんときれいなこと。
暗い粗末なセットから伸びやかな歌声が流れたときの心洗われるような鳥肌が立つような感覚は本当にすばらしかった。
この時代にこんなに美しい歌があったんだと改めて思い知った感じだ。

敗戦の色は濃く内地決戦をするかやめるかぎりぎりの状態の今。
神宮という名前を持った日系2世に国家は名前を変えろといい、彼女の両親はアメリカで迫害され、彼女は日本で迫害されどこにも受け入れてもらえない。
博士の教え子はエヌオー(NO)について研究していた。
世界中の言葉で「いや」という言葉には「NO」が含まれているという。
その彼が最後に敵に向かって飛び立つ日に書いた日記は、手帳の最後までびっしり「おとん、おかん」と繰り返し繰り返しかかれていた。

内容は、つらくかなしく、涙があふれてくる。
私には土居裕子さん演じる神宮淳子さんがとてもすばらしいと思った。
全体が膨大なせりふと、たまにコミカルなダンスが入り、ふっと息抜きもある。
見終わってすごく疲れたのだが、あの「すみれの花咲く頃」の歌声はいつまでも私の胸から抜けることはないだろう。



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