パラダイムチェンジ

2006年01月19日(木) ほりえもん的経営哲学と林文子的経営哲学

今週の月曜日に行なわれた、ライブドアへの強制捜査が世間を騒がせて
いる。
彼のグレーぎりぎりだったビジネス手法が、果たして本当に真っ黒だった
のかどうかは、今後の捜査や裁判によって明らかにされていくのだろう。
東京地検特捜部にとっても、これは「国策捜査」らしいので、躍起になって
立件しようとするのだろうし。

今後東証の日経平均がどこまで下がるのかは分からないけれど、最近の
株ブームに乗っかった人にとっては初めての下げ局面なのだろうから、
授業料を支払ったようなものなのかもしれない。
それを本業になさっている人に対しては、まことに気の毒としか言いよう
がない。お見舞い申し上げます。
また今後は日経平均が堅調に動く事を祈っております。

今回の強制捜査に関して、様々な人が様々に語っているんだけど、
私が一番興味を持ったのは、私が時々引用している内田樹センセイの友
人である、平川克美氏のブログの内容だった。

以下引用させていただくと


しかし、俺は
堀江をビジネスマンであるとは思っていない。
彼を新しいタイプのビジネスマンであり、
市場原理の申し子だといって
おだて上げ、選挙の場で猿回しの猿の役回りを与え、
真正の起業家精神のロールモデルのように
担ぎ上げようとした、事業家、政治家、
金融家、観衆たちは、いったい何処を見ているのかと思う。

俺にとって、
ビジネスの現場とは、
商品をつくり、その商品という言葉を通じて
顧客と出会う場所である。
堀江は、
どのような意味においても、
その商品をつくってはいないのである。
彼が作っているのは
仕掛けであり、罠であり、ビジネスモデルと呼称される
ものである。
そこには、カモはいるが、起業家が出会うべき
顧客はいない。
商品と顧客がいない金の流動や蓄積を
ビジネスと言ってはいけないのである。

何度も書いてきたことだが、
ビジネスの現場では
二重の交換が行われている。
商品とお金という目に見える交換と
誠意と信頼という目に見えない交換である。
この二重の交換の意味が分からないと、
ビジネスとは限りなく、詐欺に近いものになる。



という部分である。
なんでこの箇所に興味を持ったかといったら、たまたま今週読んでいた
本、「林文子 すべては『ありがとう』から始まる」の中に共通する
ような表現があったから。

林文子とは、女性で初めてフォルクスワーゲン東京、BMW東京という販売
会社の社長に就任し、現在は再建中のダイエーの会長に就任した人。
この本の中で、林会長はこう語っている。


「たとえば、六千台の車を販売するということをイメージしたとき、六千
分の一は、一人の営業マンが、一台を一人のお客様に売るということなん
です。販売会社、小売業というのはある意味ではシンプルなんです。もの
を仕入れて売って、それをアフターケアして、またその人とのお付き合い
の中で新しいものを買ってもらう世界でしょう。だから、自動車の販売業
で何が残るって、人しかないし、まったく人のビジネスそのものじゃな
い。だから、トップマネジメントが人に触れるしかないじゃないですか」


はたまた、現在再建中のダイエーに関してはこう言う。

「要するに、私どもは小売、リテールの仕事ですから、経営管理で理屈で
がんじがらめにするのが商売なのではなく、毎日お買い物をしてくださる
お客様は愛だとか信頼だとか、店員が優しく声をおかけしてハッピーに
なれるという世界なんです。ところが、本部で経営を進めていこうとする
ときの戦略は、全然違う議論になってしまう。私はそれは本当におかしい
と思います。お客様商売、物を売るという会社なんですから、もっとそう
いうお客様の気持ちを肌で感じる、心で感じながら議論しなきゃだめよね
と考えていますし、社内で話しています。最近はダイエーもそういうこと
もノーではない会議になってまいりました。期待してくださいね」



でもダイエーの林文子会長と、ホリエモンのビジネス哲学は対極なのか
なあ、と思うのだ。
ダイエーに関してはまだまだ再建途中はあるけれど、でもおそらくは
うまくいきそうな感じもする。

それは多分、こういう人がトップだったら、社員は働き甲斐があるだろう
なあ、と思うからである。
対してライブドアの会社に、果たしてホリエモンのために骨を埋めよう
と思って働き甲斐を感じている社員がどれだけいるのかを私は知らない。
それは、ライブドアの今後を見ていれば自ずと明らかになるのだろう。

でも例えば、林会長にせよ、また日産のカルロス・ゴーンにせよ、共通し
ているように感じるのは、現場の人間が視野に入っていて、部下・顧客と
の信頼関係があるという事なのかもしれない。

多分人に対してだましたり、カモだとしか思えないトップと、人の事を
信頼できるトップでは、短期ではそんなに違いはなくても、長期では
おそらく有意な差が表われてくるのかも。
ビジネスって言うのは、それこそLOHASではないけれど、長期に維持可能
(sustainable)なことも重要だと思うし。

それはこの年末・年始にポイント騒動を起こした楽天についても言える
と思うのだが、果たしてこっちはどうなるんだろうか。


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