金曜日の夜、国立科学博物館に「ナスカ展」を見に行ってきた。 金曜日の夜だけ、上野の博物館は、夜8時まで開いているのである。 日曜・休日では並ばないと見られない、こうした特別展も、この時間 帯はさすがにお子様の数も少なく割と静かに見ることができるのだ。
ナスカとは、あの「ナスカの地上絵」のナスカである。 はたしてあの、ナスカの地上絵を描いた人々はどのような暮らしを していたのか、という展示会。
これがねえ、予想していた以上に面白かったのである。 ナスカというのは、南米ペルーのアンデス文明の一時期に栄えた文化 であるらしい。 それがおよそ、紀元前1世紀から8世紀頃まで。 日本で言うなら、弥生文化から、大和朝廷〜奈良時代くらいまで。
彼らの文化の特徴を一言でいうなら、文字を持たず、また絶対的な 王や統治者はおらず、シャーマンが精霊や超自然的な存在である、 動物の神々と交信するような、神話的な世界を生きていた人々であるらしい。
日本で言えば、縄文時代、いわば中沢新一が書くところの 「アースダ イバー」や、神話的思考の世界な訳ですね。
日本の縄文時代もそうだけれど、その時代、文字による記録がなかった からといって、当時の人々が貧しく、また知能が発達していなかった 訳ではなく。 むしろ、出土する土器やら、織物の鮮やかな色あいと、その絵柄の 語る物語性の豊かさに驚かされるのだ。
ということで写真を一枚。
これは、会場で売っていた絵葉書をスキャンしてアップしたもの (ってやばいんだろうか、どきどき)なんだけど、これを1500年前の 人が描いたって、すごくないですか? 本当は、会場に行けばもっと面白い柄の土器や人形が一杯あるのだ。
なんかね、こういう絵を描くイラストレーター、いるよねーという 感じで。肝心の名前が出てこないあたりが老化の証なんだけど、 バスキアとか、日本だと誰だろう、時々広告アートなんかで見かけて もおかしくないような絵柄で(例えば、ホットヌードルのイラストと か)。
しかも絵柄は、土器を焼く前に描いて焼き付けたらしく、もしもこう いう柄のマグカップがあったら、買っちゃうかもしれない、という位 ツボに入ったのである。 さすがに、首級の入った柄は遠慮するけど、シャチとか、農夫とか、 ハチドリの絵柄がかわいくて。
また織物も、これが1500年前の遺跡から発掘されたものなの?(一部 は復元されていると思うが)と思うくらい、きちんと織られて、また 色も豊かで。赤とかは、木についている虫からとったらしいけど、 一体何匹の虫がいるんだか、という感じで。
日本で、法隆寺とか、古事記なんかを書いている地球の裏では、彼ら がこういう土器や織物を作ったり、また地上絵を描いていたりしたん だなあ、と思うとちょっと不思議な気分になったのである。
また、地上絵に関しては、巨大なスクリーンで、セスナからの空撮を CG加工したバーチャルシアターで見ることができて。 あれって、紫外線で黒く焼けた石の広がるパンパという砂漠地帯を、 数センチ〜数10センチ掘る事で白い地面を見せて出来上がっている らしく。
実際にその地面を再現した上を歩いたりすることもできて、ちょっと だけ、地上絵を見に行った気分が味わえました。
でも、実際に空撮で見た場合、地上絵よりも、その周りに縦横無尽に 刻まれている車のわだちや、道路の後のほうが目立ってしまって、 巨大といわれる地上絵が意外に小さく隠れてしまっていて。 それがちょっとショックだったかも。
会場で市販されていたDVDでは、地上絵の空撮映像をよりじっくり 見ることができたので、結構オススメです。 あと会場では、音声ガイドの出るPDAを500円で貸してくれるんだけ ど、これの解説がより詳しかったので、これもオススメ。
会期は6月までなんだけど、終わってしまう前にもう一度は見にきた いなあ、と思うくらい充実した展示でした。
あと、ナスカの人々ってすごいなあ、と思った人には、こちらの本も オススメ。
人類最古の哲学―カイエ・ソバージュ〈1〉
世界各地の、神話的思考をしていた人々の、豊かな物語を味わうこと ができます。 あの、シンデレラの話が、そのオリジナルの話が実は世界各地(中に は中国にまで!)にあったって知ってました?
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