キッシンジャーの日々
キッシンジャー



 東京遠征−過熱

昨日の疲れからか、僕は昼過ぎまで爆睡してしまった。

起きたのは午後の3時前。

僕は、友達のベッドで寝ている友達の彼女を叩き起こした。

僕:「学割取りに行くけえ、学生証貸してくれ」
彼女:「いいけど、私暗証番号忘れたから自分で聞いてね」
僕:「そんなことできるん?」
彼女:「前にもそんなことがあって、友達がしてたからできるんじゃない?」
僕:「・・・・・」

僕はそうして彼女から学生証と定期を預かって、学校へ向かった。


(学校で一悶着ありますが、省略)


武蔵境で一旦降りた僕は、そのまま立川方面の中央線に飛び乗った。

まさに衝動的だった。

こんな時間にどっかへ行くのが億劫で止めるつもりだった。

どこへ行くというのだ?




青梅線の車内で、突如として鬱屈とした不快感に襲われた。

脳髄を静電気にやられたように、内部からチリチリと肉体が沸き立っている。

鈍い苦痛で顔が歪む。

座席に座っている客の一人が下から覗き込むように僕を一瞬見上げる。

それを睨みつけるような眼差しで一瞥し、苦し紛れにガムを噛む。

味気のない、糞のようなガムだ。

今すぐにでも、その座っている罪の無い乗客に吐き捨てたいくらいだ。


夕暮れが迫ってくる。

夜を引き連れて、その中に僕をねじこもうと強迫してくる。

ギスギスした肉体と精神が俺を総体から切り離す。

そして孤立させる。

突然の乖離で俺は戸惑う。

そんなに俺の存在は、唯心的価値は虚弱なのか?


このままでは崩壊してしまう。

俺と世界を結び付ける橋が。

補強しなければ。

どうやって?

回帰だ。

世界への回帰だ。

どの世界へだ?

過去、現在の事象をも包含した僕自身の未来へだ。

今まさに必要な未来、その場所とは。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・福生だ。

そう、俺は福生に向かっているのだ。

行かなくては。

ヤツが雨の中、リリ―と横たわったあのフェンスに向かうんだ…




・・・こうして、僕は福生へ辿りついたのだ。





この街は違う。

次元がかけ離れている。

そう、たぶん臭いだ。

臭いが違うんだ。

まるでファーストフードの店裏にあるポリバケツにこびりついたような腐臭だ。

アメ公の臭いだ。


横田のそばを走る道沿いに歩いた。

決して渡れない道。

歩道橋が一般の歩道さえも跨いで、塀の中同士を繋いでいる。


僕は思う。

こんなことを平気でできるヤツらは脅威だ

と。


権威という盾に隠れて、にやついてやがる。

俺達に向かって銃を突きつけるような姿で、脅迫してやがる。

銃を片手に「ナイストゥミーチュー」と、握手を求めてきやがる。


ヤツらが抱いているものは愛といった高尚なものでは断じてない。

ただのプレッシャーだ。

我々に対する威嚇だ。

戦わなければ。

こんなふざけたヤツらにこそ罪を背負わすべきなのだ。


人様の家に土足であがるような傲慢な文化が良くない。

だからこいつら平気なんだ。

こっちが嫌な顔してても平気なんだ。

盲いた魂を持つ腐った羊なんだ。


だから、福生は臭いんだ。




すっかり夜だった。

寒い中、二時間も歩いて、僕はすっかり冷え切ってしまった。

武蔵境に辿りつき、平和な町並みと人々をみて僕は思った。

『闘うことを忘れれば、人はこうも腐っていくのだ』

2002年12月27日(金)
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