| 2003年05月23日(金) |
どうしても認めたくなかった夜 |
この日は妙にイライラしてた。 前から思ってたけど、親父のチェリーの対する無神経さが気に食わなかった。 「〜〜出来なくなった」「〜ない」とか否定なことばっか言ってることに。 この日少し早めの給料を貰いつつ、その不満をぶちまける。 貰った矢先に言う立場じゃない。 分かってる。 でも感情が利かなくて、そんな自分に苛ついていた昼。
この日はずっとチェリーの傍にいてあげようと誓った日。
何も考えずに。 だからいつも通りに、いつも以上に甲斐甲斐しく見てあげた。 ここのところずっと寝たきりだから、ほっぺたを噛んで傷ついてたから消毒してあげて、 口の周りを渇いたシャツで拭いてあげて、少しでも楽なようにスポンジを引いてあげたりして。 そして今まであげてなかった缶詰のペースト状のご飯を食べさせてあげて。 食べてくれて・・・ お腹がギュルギュルギュル〜って言ってから、「ほら、お腹も美味しいって言ってるんだよ」なんて言ってて。
今こうして書いてると、まるで分かってたみたいじゃないか。 でも違うの。 全然そんなつもりじゃなかった!!!
なのに・・・
午後9:00
私は珍しくこんな早くにお風呂に入ろうと下に降りた。 今は思い出せないけど、チェリーがいるとなりの台所にいた。
息が 聞こえた。
喘ぐような、大きく吸い込む息。
ほんの数メートル。足が縺れるようにチェリーのもとにすっ飛んだ。 瞬間的にお父さんを呼びに走った。
いつものように右手でチェリーの頭を抱き、左手で顔をさすり続けた。 そして「ねーちゃんが傍にいるから」って狂ったように言い続けた。 お父さんは体を揺すってた。
今思えばこの間たったの5分。 だけどこのときは残酷とも言えるくらいの永遠の時間。
何度か喘いで
息を吸って
吸ったまま--------------------------------
私の腕の中で。
その場に兄ちゃんやお母さんはいなくて。 「起きないと怒るよ!!」って叫んだのに。 「お母さんが明後日帰ってくる」って叫んだのに。
『チェリーが最後に私を呼んだ』 『嘘嘘嘘嘘嘘ぉーーーーーーー!!!』
ソレガウレシクテ、カナシクテ
タエラレナクテ
それからの3時間、まだ温かいチェリーの傍で・・・ 脇なんか温かくて。 でも鼓動が消え入りそうになっていくのを聞いた。 耳を押しつけても自分の心臓がうるさくて聞こえない。 いっそコレがそうであればいい。 最近横になりっぱなしだったチェリーの顔を抱き起こして、 正面を見た。
目が------------------
それはとても端的で、最高に残酷な知らせ。 一瞬。 私は認めざるをえない状況に追い込まれたのかもしれない。 でも私が許さなかった。 嘘だから・・・
時間がとても、とても速く感じた。
私の足は役立たずで、でも涙と嗚咽とチェリーを呼ぶ声だけは止むことを知らない。
認めなかった。
嘘だと呪文のように・・・
でもどこか・・・
夢であってくれればいいと・・・
このままこの感情に溺れたままなのかと思うと耐えられない。
嘘だから・・・
「ねーちゃんがそばにいるから・・・」 これは魔法の言葉。 私もチェリーも安らげる言葉。
これだけが、唯一確かなもの。
|