蛇腹食堂
書人*なび太

   

  




想像と現実
2003年03月05日(水)
父さん…。
僕みたいな夢見がちな人間は、
何事にも「初物」というものに、
淡い想像を思い描いてしまうわけで…。



−私の想像していた「会社」−
自動ドアを抜けると
そこは「受付」だった。



〜現実〜
玄関を開けると
そこは「仕事場」だった。



−私の想像していた「面接前」−
受付の女性社員に案内された会議室の前で、
パイプ椅子に座りながら、
前日から考えてきた「段取り」を復唱。
会議室の中から、
「次の方、どうぞ」の声。
ドアの前で姿勢を正しつつドアをノック。
「失礼します。
 ○△専門学校から来ました、なび太と申します。
 本日はよろしくお願いします!」
「はい、ではお掛け下さい…」
面接開始…



〜現実〜
目を真っ赤にした社員さんに案内されたのは、
ホワイトボードのみで区切られた「会議スペース」。
「どうぞ」
社員さんに進められるまま、
会議用の椅子に着席。
この時点で前日から考えてきた「段取り」は崩壊。
うっかりしてコートを脱ぐことすら忘れた。
おろおろしていると、早々に社長登場。
「◎×取締役社長のKです。宜しくお願いします」
挨拶、
社長に先を越される。

慌てて立ち上がりつつ、
「あ、よよよろしくオネガウィ(噛んだ)します…」
と言うのが精一杯であった。
社長、微笑みつつ「お掛けください」の一言。
「あ、はい」
と慌てて再着席するも、
コートを着たままであることに気付き、
再々起立。
わやくちゃである。



−私の想像していた「面接」−
長机を挟んで向い側に面接官が数名。
いずれも仕事の疲れで不機嫌極まりない。
「なんでウチへ?」
「なんでゲームなの?」
「この程度の絵で良くウチに来たね」
胃が引き裂かれるような質問の連続。
しかし負けずにハキハキと答えていく。
時には笑みさえ浮かべる余裕。
極力平静を装いつつ、
30分に渡る面接官との死闘をやり過ごし、
「本日は誠にありがとうございました!」
の声とともに深くお辞儀。
颯爽と退出。



〜現実〜
会議用の4人掛けテーブルの向こうに社長が1人。
すぐ側で社員さん達が仕事をしているので、
あまり大きな声ではしゃべれない。
柔和な表情を浮かべたその社長は、
履歴書と作品を交互に眺めしきりに頷いている。
「逗子から来たんですか!?」
「え?あ、はい…。逗子です…」
「大変でしたねぇ」
「あ、いや、学校が高田馬場なので馴れております」
「ああ、そうなんですかー。ははは」
「あはは…」
その他簡単な質問を少々。
社長、頷く回数が増えてくる。
そんな僕達の横を社員さんがスッと通り過ぎ、
背後のトイレと思しき場所に消えた。
「そっかー…(何が?)」
「はい…(いや、だから何が?)」
「ズジャジャジャーッ!!」
僕のか細い声は流水音にかき消された。
ついに間がもたなくなった社長、救援を呼ぶ。
「Sさん(デザイナーチーフと思われる)、
 今仕事忙しい?」
「ダメ!!」
なぜかその「ダメ」が自分に向けられている気がする。
「そっかー、あー、じゃ何か質問ありますか?」
「えー…、そうですねぇ、
 あのー、雇用形態のことなんですが…」
「ああぁ、その辺は曖昧でしてねぇ…。
 まぁ、今の業界だとどこもそうだと思うんですけどね」
「ああー、そうなんですかー…」
「ええ…」
「…」

〜10分後〜
「そっかー…」
「ええ、はい…」
「ねぇ、Sさん!まだ忙しいの?」
「ダメだっ!!」
「じゃあ、いいね?」
「うん、任せる!」
「じゃあ、とりあえず本日はこの辺で」
「え!?あ、そうですか」
「合否についてはまた後ほど連絡しますので」
「あ、はい」
社長に玄関まで送ってもらう。
と、言っても数メートルだが…。
「本日はどうもありがとうゴザウィマスタ(噛みまくり)」
「いえいえ。では」
「はい、失礼します」
よろよろと玄関から退出…。




父さん…。
初めての面接は
色んな意味でとても「新鮮」でした。

あーあー あああああーあ〜♪(唄:さだ○さし)




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