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私はカニにはなりたくない 2003年10月18日(土) |
こんばんわ カニです。 ただのカニじゃありません。 毛ガニです。 気が付いたら毛が生えてました。 「大人じゃん」ですって? そうなんでしょうか? 隣のタラバさん家のお嬢さんなんかは、 僕のことを、 「何っ、この毛だるま!? ちょーキモイんですけどぉ! 近寄らないでぇ!!」 なんて言って嫌うんです。 毛ガニだけに毛嫌い。 なんつって。 あ、こういうオヤヂっぽい所が嫌われるんですか。 そうですか。 えー、僕は今、水槽の中にいます。 上を見ても、下を見ても、 右にも左にも、 どこをどう見渡しても毛ガニだらけです。 ていうか、ぶっちゃけ、 身動きすらままなりません。 毛ガニ満載です。 互いに毛が絡みあって嫌な感じです。 毎日毎日満員電車に揺られ、 会社に向うサラリーマンのお父さん方。 ご苦労様です。 カニながら、ご心中お察しします。 本来僕らカニってのはお気楽な生き物なんです。 お気に入りの岩場は棲家としては快適です。 時折、波にさらわれて大変な思いをしたりもするけど、 何せ、この固い殻があるでしょ。 だから大した天敵もいないんですよ。 僕なんておまけに毛が生えちゃってるから、 見た目にもよろしくないしね。 あ、アナタ、 今僕のことを蔑んだ目で見ましたね。 ええ。どうせ僕は毛だるまですよ。 醜い毛玉の児ですよ。 でもね、自分では気に入ってるんです。 冬場は温かいしね。 だから他人にどう思われようが結構です。 結構毛だらけ猫肺だらけッ! お前のケツは穴だらけぇぇぇっ!! ね、猫って、 そんなにイッパイ肺が付いてるんですか? ていうか、猫ってどんなんですか? あ、話がだいぶずれましたね。 そう、 僕らは海の中でも食物連鎖に寄与しない役立たず、 いわば「粗大ゴミ」ってとこですかね。 フ、フフフ…。 でもね、 そんな僕らのことを、 何故か捕まえる生き物がいるんですよ。 そう。 アナタ方「人間」です。 僕はね、 我ながら自分のことを「醜い」と思ってますよ。 だって足何本もあるし。 いやね、タカアシガニ君なんかは良いですよ、 モデルばりにスラーッと足が長いしね。 でも僕、 見てくださいよ、 この見事な短足っぷり。 しかも殻だって固いばっかりで、 優しさの欠片も感じられないでしょ。 おまけに毛生えてるし。 それにね、何がいけないって、 一番問題なのは、 手にハサミ付いちゃってることですよ。 そりゃね、餌を取ったり、 毛にゴミが挟まった時なんかは便利ですよ。 でも、これじゃあ、彼女と手を繋いで、 黒潮ストリートを仲良く闊歩する事だって出来やしない。 え?彼女いるのかって? ほっといてくださいよ。 どうです、わかったでしょ、僕の「醜さ」。 僕はね、カニながら、アナタ方人間を軽蔑します。 なんでこんな生き物を捕らえようとするのですか? いや、 もうこの際だから言わせてもらいますけど、 何で食べちゃうの? ねぇ、 何でこんな凶悪な形相の生き物を、 食べようって思えるの? 手、ハサミよ? 見て、この足の爪。 こんなんでひっかかれたら痛いよぉ。 足だって、ホラ、毛むくじゃらよ? 悪いけどアンタのスネ毛とタメ張れるからね。 我ながらビックリよ、この生え具合。 あ、あ、あっ! ほら、見てよ、あすこの人。 カニの爪を使ってカニ肉ほじくり出してるでしょ。 ひどいよね。 考えてみ。 アンタ、 自分の肋骨使って、 自分の肉ほじくり出されたら、 どう思うよ? ねぇ。 いやだよね? あまつさえ、アレよ、 そのほじくられた肉集めて、 脳みそとグッチョングッチョンに混ぜ合わせて、 食べられちゃうのよ。 挙句の果てに、 「うん、ウマイ!( ゚∀゚)」 って…。 あ、すいませんね、つい興奮しちゃって…。 でもね、僕はね、 本当にアナタ方の品性を疑いますよ。 おいしいからって、 なんでも食べりゃあ良いってもんでもないでしょ? 僕なんてね、 姿も見えないようなプランクトンを食べて、 謙虚に謙虚に、生きてるんですよ。 それを、それを…。 本当に酷いよなぁ…。 …あっ、コラ、テメッ、上のカニッ! 俺の目玉を踏むんじゃねぇ!! 全くねぇ…。 世の中、不条理ですよ。 まいっちゃうよなぁ。 僕、なんか悪いことしましたかね? そりゃ毛生えてますよ。 でも、好きで生やしてるわけじゃないし。 ただ平和に毛ガニやってただけなのになぁ…。 あ、あっ、 水槽に手が入ってきました! 悪魔の手ですッ! 死神登場ですッ!! あの赤い手袋、 アレに捕まったら最後、 食卓直行ですよ!! って、俺ッ? 俺なの!? ええー、そりゃないよー。 あっ、コラ、上のカニッ! 華麗に避けてんじゃねッ!! あーん、旦那ぁ。 勘弁して下さいよぉ。 アッ、アッ、縛らないで。 しばっちゃイヤっ…。 ウソですっ。 むしろもっときつく! そうッ!! あぁ、アナタ。 聞いてます? 僕はどうやらこれでおしまいのようです。 最後に一言だけ言わせて下さい。 僕は幸せな毛ガニでした。 生きたまま釜茹でなんて 嫌ぁぁぁっ!! とぷん *************************************************** 本日は、 テレビで見た北海道のカニ市場の映像より、 名も無き毛ガニさんの気持ちを代弁(?)してみました。 人間って罪な生き物ですね。 だってオイシイんだもん。 |