蛇腹食堂
書人*なび太

   

  




ワカリマセン
2003年12月05日(金)
はっきしゆって、
僕は自他ともに認める「近寄り難い人間」だ。
だが、
どういうわけか、
道を聞かれる事だけは多い。

地元出先問わず、
街中、信号待ちの交差点、駅、
挙句の果てには交番の前でまで、
声を掛けられ、
「ここへ行くにはどう行ったら良いですか?」
と来る。

普段は話しかけられる事など少ないのに、
困った時だけ助けて欲しいなんて、
あまりに虫が良すぎるんでなくって!
と思うのだが、
困った顔で聞かれると、
つい可哀相になって答えてしまう。
一度で良いから、思い切り、
「知らん!!」
と突き放して放置プレイを楽しんでみたいのだが、
どうも上手くあしらうことが出来ない辺り、
僕がイマイチ激Sになりきれない所以
僕が世間馴れできない由縁なのかもしれない。

しかし、それも良い顔をして受けていられるのも、
相手が日本語を喋ってくれる時までだ。
どういうわけか、
僕にはグローバルな方々までが近寄ってくる。
勿論道を尋ねる為にだ。

「○×〒$、#¥&■☆〜?」

相手はしたり顔で聞いてくるが、
27年間、
頑なまでに日本語のみを愛用してきた僕に、
当然の如く相手の言わんとする所は伝わらない。
それも英語圏の言葉であれば、
なんとなーくだが、
聞き取れた単語から判断のつけようもある。
答えることができなければ、
泣きそうな顔をしながら、
「んぁー、あー、ソォーリー…」
と言いいつつ首を振り、
「ワタシバカデアナタミチオシエルコトデキナイヨ」
という悲しい事実をお伝えすることもできる。

ところがこれがアジアンラングエッジになると、
もう手の付けようがない。
単語は愚か、
どこが助詞でどこで言葉が切れてるのかもわからない。
おまけに答えようにも、
相手にどのように伝えていいのかさえ検討が付かないのだ。

大体僕なんぞどぉー贔屓目に見ても、
多言語を喋れるような知性の持ち主には見えないと思うのだが、
それでも彼ら彼女らは、僕の顔を見るなり、
良く澄んだ目をさらに輝かせて近寄ってくるのだ…。

先日も面接で訪れた赤坂見附の駅で、
渋谷方面行きの電車を待っていた所、
いきなり背後から聞きなれない言語で声を掛けられた。
振り返ると、
そこには東南アジア系らしい熱烈眉毛を生やした、
色黒健康的な男性が立っていらした。

(来た…。来たよ、また来たよ…)

「ヲヰ◎”▼¶′_`ゞ☆ω×ー!?」

もうぜんっぜんわかんないッス!
一言一句、
全てがワタシの辞書にありませぬ!


幸い、
その男性が道を尋ねていることはすぐにわかった。
彼は地図を開いて僕の前にかざしていた。
だが目的地を一向に指し示してくれないので、
彼がどこに行こうとしてるのかが分らない。

とりあえずダメ元で、
「あー、えーと、どこへいこうとしてるのですか?」
と日本語をフル活用して聞いてみたが、
当然のように彼の頭上に?マークが速射された。

なんとか
「ワタシアナタノイッテルコトワカラナイ」
という意志を伝えなければならないので、
散々オロオロした後、
仕方なく顔をしかめつつ肩と手を上げる。
アメリカ人お得意の「hum-?」の時のアレだ(?
自分もカッコ悪いし、
相手にも失礼だし、
なんだか最高に惨めで悲しい気分になった。

だが相手の男性は全く怯む様子もなく、
元気良く何かを尋ね続けてくる。
この辺で意志が伝わってないことに、
いい加減気付いても良さそうなもんだが、
彼の母国では、
「わからない事はトコトン聞かねばならない」、
という戒律でもあるのだろうか…。

結局、僕はその後、
電車を1本乗り逃すまで彼に拘束され続けた…(涙
その悲しい異文化コミュニケーションは、
全くもって成立しなかったはずなのに、
彼は最後に最高の笑顔を残し、
浅草方面に向う電車に飲み込まれていった…。
その間、何度となく、
僕らの傍らを通り過ぎていった人々がいたのだが、
皆「なんだなんだ?」という顔はすれども、
そのまま遠のいていってしまい、
手助けしようなんて心優しい人は一人もいなかった。

トム、
この国にはもうサムライなんていないようだYO。
ふ、フフフ…。

ていうか、
おまい様方、頼むから少しは日本語勉強してきてくれヨ!




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