くるくるくろりくくろにくる
いんでっくす|ふるいの|あたらしいの
※怖い話が苦手な人はパスしたほうが賢明かも
Kちゃんは厳密に言うと別の会社の社員でした。 でも同僚ってくくりかな。 平たく言うと、社長が同じの別会社ってやつ。 しかも私の所属している会社の経理部とKちゃんの所属している会社の経理部は同一だったのさ。 私とはフロアが違ったけど、総務・経理のあるフロアに壁も無く並んでいたので、別会社というよりは他部署ってぐらいの感覚。
実際、私とKちゃんは仕事の接点も無く、殆ど口を聞くことも無かったんだけど、どうした流れからか総務&経理の同僚と飲みに行ったりするようになり、何時の間にか話をするようになったのは去年の夏頃。
その後、毎朝同じ改札から出てくることを知り、出勤時間&利用線路が同じ事を知るようになる。
が、声をかけようにも何時も男性と連れ立っていたので遠慮し、仲良さそうに売店に立ち寄る2人の後姿を見送ったものです。
後日、「そんな〜遠慮しないで声かけてくれれば良いのに〜」と笑っていたKちゃんでしが、それでも時折見かける2人の姿にはやっぱり遠慮してしまう私でした。
そんなKちゃんも会社を辞めてしまい、その別会社も他の会社に売却され移転してしまい数ヶ月が経ってしまいました。
本当に今朝まで私はKちゃんの事をすっかり忘却していました。 勿論、プライベートな連絡先を知るほどの仲でもなかったものですから。
ところが今朝、湿度の高さにヘロヘロになりながら改札を抜けた瞬間、目の前の人ごみの中にあの見慣れた後姿があったのです。
黄色の木綿のブラウスの質感もハッキリわかるほどの距離で、細身の背の高い男性と仲良さそうに歩くあの後姿。
『あ、Kちゃんだ!』
私は咄嗟にそう思いました。 何の疑問も持たないほど、その後姿はKちゃんでした。 100歩譲って人間違いにしても、兎に角、知らない誰かではなく、何故だか判らないけど私はKちゃんを思い出していたのです。
『新しい勤め先が又この駅界隈なんだろうな・・・・・会社についたら誰かに聞いてみようっと』
そんな事を思いながら駅の階段を降りる頃、あんなに鮮やかで人目を惹いていた黄色のブラウス姿がもう何処にも見えなくなっていました。
それから2時間後、Kちゃんが不慮の事故で昨日亡くなったと知らせが来ました。 さすがの私も鳥肌が止まりませんでした。
それと同時に悲しくて悲しくてたまらなくなりました。
彼女は本当に今朝私の前を歩いていたのでしょうか? それとも、ただ、目に見えない何かを感じた私が彼女の事を思い出しただけのことなのでしょうか?
その何れにしても、何故私なんでしょう。
私は何が判ると言うのでしょうか? 判ったからと言って何ができるのでしょうか?
残念なことに、私は彼女がどんな女性だったかをあまりにも知らないのです。 それなのに、何故私なんでしょう?
胸が痛いです。
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