あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
 note-N.E,ナビゲーター 2002年03月07日(木)

彼女の49人目を見つけた僕は、メールを出すべきかどうか迷っている。

人の魂にはきっと、消し去ることのできないIDが刻まれているのだ。
それは少しばかり昔に盛んだった、パソコン通信のIDナンバーのように。
ハンドルネームをいくら変えても、晒されてしまう個人識別番号。
例えオフラインでは一度も会ったことが無くても、判ってしまう。

キミは、キミなのだろう?
かつて<愛>と呼ばれていた
LoveでアイでIでラビでラピスで逢木でユウキでガジェットでうさぎでラビットで
とにかく
数え切れないほどの存在を繰り返し経た
キミ

彼女の魂に刻まれたIDは
常に叫びつづけている
「ワタシを見つけて、探し出して」
僕は多分呪いにかかってしまったんだろう。
星の数ほどある投稿サイトの、それこそ宇宙の塵ほどの書き込みから
彼女を見つけつづける
無益な作業を僕は繰り返し
求める答えが得られないたびに生まれ変わる
彼女を見つめつづけてきた

人の生まれ変わる姿というのは
きっとこんなふうなんだろう
答えを探し続けて
どこまでもどこまでも
輪廻を繰り返していくのだろう
誰かに救い出される
その日まで

彼女の書き込みから24時間
だれもレスをつけない孤独な呟きに
僕は返事をしてやるべきだろうか
それとも
彼女ただひとりに届くように
囁いてあげるべきだろうか

ぼくは
キミを見つけているよ








 



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 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe