あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
 木蓮の木に 2002年06月02日(日)

くちづけて、それから、
てをつないで、それから、
それから、僕は何を言えばいいのだろう
君の眼差しの先にあるのは空、果てが無い
いや果てが無いと思うのは僕だけで
君は見ているのかもしれない
果て、を
限界という稜線を

積み重ねてきた言葉の数を数え上げて
庭の木蓮の先までも届かないと笑ってみる
君は泣いてしまいそうだけれど
僕らの時間はまだ、
軒に届く枝ほどにも伸びてはいない

目覚めたばかりの幼い瞼で
紫のふっくらとした鳥のような形を
僕らは心のどこかに刻みこんだのではないか
今、緑の葉を茂らせる木を見上げ
同じ形を思い出しているのではないか
優しい色を差し出して
君の眼差しを遮りたい
果てなど探さなくていいのだと

くちづけて、それから
手を繋いで、それから
それから、君が泣いたりしないように
花の形を探してみようと思う


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 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe