あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
 温もりを知らねば掌は 2002年11月02日(土)


野良の猫に屋内の暖かさを知らせてしまえば、冬の戸外は辛い場所となってしまうでしょう。
彼らの全てを家に上げることが出来ないので、私は、窓の外で身を縮めて震える猫を、ただ、見ています。
寒い。当然。
けれど、あそこが、野良の生きる場所なのだ。
独りだった人間が、誰かと過ごす時間の楽しさを知った後に、独りの意味を知るように、彼らに家の中の暖かさを教えて、彼らが生きているのは「寒く厳しい」場所なのだと、そう教えてしまうことになるのは、残酷な気がする。
(いえ。餌を与えた時点で大分失格なのかもしれませんが……。)
でも、生きろ、と思う。
どんなに厳しい場所でも、必死にあがいて、生きろ、と思う。
絶滅危惧種も、外来種も、害獣も、人間も、植物も。
ただ、生きるために、生きる。
それが答えだ。


けれど寂しい、とも思う。
手に入らないものを羨む心は、寂しさを増大させる。
目を閉じて、忘れてしまえ。


  ※    ※   ※

その人の膝のうえに
だいだい色のひだまりは
いつでもあるのでした

濡れた髪を拭う
優しい手を望みながら
三和土にぽつりぽつりと
雫が輪を描きました
手を伸ばせば
消えてしまうでしょう
ましてや

声を潜めて
ひゃくまで数えます
ひとつ
ふたつ
それから
縁側の洗濯物の匂いが
みっつめで眩暈を起こして
帰り道で潰された
小さな生命のことを思い出したのです
ただ
歩いていただけだったのに

潰されたひかりのことを思い
また外へと出たのでした
膝の上のぬくもりは
私のものにはならず
あまつぶの数だけが
また
増やされてゆくのです



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 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe