あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
 2003年05月06日(火)

まばたきをしよう、何度でも

  何度でも  
        娘よ

はじめての春を迎えて
お前はひたすらに目を見開く
春、すべての春が
御牧の上に還ってきたのだ

娘よ、まばたきをしよう
すべての美しいもの
すべての儚いものを
その眼の奥に焼き付けるために

せわしなく散る桜
木陰を照らす山吹
色濃い花桃
健やかな柳
連翹の黄金
うつくしいものは、かず限りなく
止まぬだろう、百も、千も、一万も

いつか丘を下り
海辺まで行く白い季節のように
お前もまた旅立つのだろう
川面を下り
渚のさざめきに誘われるままに

その日
広々とした大地の上でいつか
お前の瞼が閉じられる日に
ひとひらの春が孵化するように
娘よ
まばたきをしよう

百でも千でも限りなく





過去 一覧 未来


My追加
 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe