あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
 2004年04月23日(金)

許すこと、とやらのために
僕は長く伸ばしていた尻尾を切ったのだった
成長したものを手放すという事は
切ないものなのだね
それにしても、いや、随分と長く伸びたものだった
毎朝ためらいもなく髭を落とす僕が言うのも
おかしな話なのだが

地を掃くためでなく
空にまるを描くためでもなく
ただ
ひこばえを飛び越すときにつるりと触れる
その一瞬のために伸ばしていた尻尾は
切り落とされてしばらくの間
うんと唸って悩んでいたようだった
自由だ
と僕が言うと
俺の自由などお前が走るその時にしかなかった
そう言って一つ転がり、それきり動かなくなったのだった
その後の事は知らない
多分

また髭が伸びてきて
僕はかみそりを手に取る
罪とやらもこのように
速やかに刈り取ることが出来るのならば
尻尾の事を思い出さずに済むのだろうに
冷たい水で顔を洗う
許すこと、を求める人のところへ
行かなければならないので


過去 一覧 未来


My追加
 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe