あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
ふたたび、その庭にて 2004年04月07日(水)

うつろであるという。

空ろであると言う、いつから恐れるようになってしまったのだろう
紫色の花弁がゆるゆると開き その内側に。

香りばかりで花の見えぬ庭では
板塀がいくつもの雨を経て朽ちていた
残された木戸だけが
誰かが訪れることを知らせるために
二本の柱で大地に踏ん張っている
しかし叩く手は
訪れないだろういや、訪れるときは
開ききった木蓮の内側には何も隠されていず
暖かな風がひとつ吹くだけのことだ

うつろであるという

煙を追って空へといった
あれは、貴女だったのだろうか
ならば繋ぎ続けた掌の内側には
春という日差しを暖める火種も
白く染まるほどに太陽を熾す息吹も。

けれど、引いてはならないので
俯くこともせず仰ぐこともせず
睨みつけている

うつろ、

また一つ風が吹き、雨が招かれて抜き足でやってくる
くちてゆく庭、庭の色合いのその先には
落ちた花弁が茶色く滲んでゆく場所の、
熱はそこからやってくるのだろう

恐れながら、私は待ちつづけ、そして恐れて目を凝らしても
見えない、その内側には。


過去 一覧 未来


My追加
 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe