台所のすみっちょ...風子

 

 

発表会。 - 2004年09月19日(日)

今、私が座っている受付の横のホールで

ピアノ発表会が催されている。

2時に開演だったのだが、

遅刻したのか、さっき一組の親子がバタバタとそっちの方に走って行った。

それを見て、私は小さい頃、私が小学校6年生で妹が小学校2年生だった、

ある土曜日の出来事を思い出した。


あの日、私と妹は息を切らしながら、母のあとを追っていた。

妹のピアノの発表会に間に合いそうにもなかったからだった。

普段着ないようなグレーのひらひらワンピースに、これまた履きなれない

黒いエナメルの靴を履いていたから、妹はとても走りにくそうだった。

もちろん、母も私もおしゃれをしていた。

つまり全員が大股で「走る」という運動には不向きで不似合いだったのだ。

にも関わらず、私たちは走り続けた。走って走って会場を目指した。


そしてようやくそこに着いた時、私たちを迎えたのは

菊の花輪と黒と白の幕。そう、誰かの葬式だった。

母が日にちを間違え、妹の発表会は次の週であった。


「せっかく来たから」などと、手を合わせるわけにも、

焼香するわけにもいかず、私達親子3人は

ただただ、その場に立ち尽くしたのだった。


おしまい。










...




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