台所のすみっちょ...風子

 

 

10年目のキス - 2005年01月14日(金)

日曜日の夕方、どういう訳か急に旦那とキスがしたくなった。

マンションの前に停めた車中でのことであった。


あたりはぼちぼち暗くなり始め、

街灯や建物のオレンジや黄色の灯りが

夕闇に少しばかりの色を添える。

「ねえ」と私は旦那に声をかけた。そして振り向いた彼に

「キスしようよ」と言って、タコのようにすぼめた唇を、

彼の口に近づけた。


ところが彼は自分の唇を突き出さそうとはしない。

何度私が試みても、顔を横に向け、頬で私のキスを受けようとする。

そしてその度に「だって恥かしいだろ〜」と彼はむくれ顔なのだった。


旦那と結婚して10年。お互いのスッポンポンな姿も見過ぎて、

もはや躊躇うものなど何もないというのに、

たかがキスごときで恥かしいとは片腹痛い。


すかさず彼に喝を入れた。

「頬を出さない!横に逸らさない!唇は中央に、中央に持って来いよ!」


私の迫力に負けて、観念するかと思いきや

「な、なんだよ!そんなこと強制されてできるかよ!」

と逆ギレされた。


その後、暫くの間

「しろよ!」
「い〜や、やだね!」の押し問答が続けられ、

結局、私の「車中キス大作戦」は失敗に終った。


おしまい。



...




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